仙台国税局が1日発表した2014年分の土地の路線価によると、東北の標準宅地の平均変動率は前年比マイナス0.9%だった。6年連続の下落となったが、下げ幅は1.4ポイント縮小した。宮城は2年連続のプラスで上昇率は全国1位、福島は22年ぶりに上昇に転じ同4位となった。
県別の変動率をみると、東日本大震災の被災3県で回復傾向がみられた。宮城の上昇率は2.4%で上げ幅が前年より0.7ポイント拡大。福島は前年のマイナス1.6%から0.8%上昇に転じた。岩手は1.7%の下落だったが、下げ幅は2.3ポイント縮小した。
他の3県も下げ幅が0.4~1.3ポイント縮小し、青森がマイナス4.0%、秋田がマイナス4.8%、山形がマイナス2.2%となった。
6県の各税務署別の最高路線価の上位10地点は表の通り。仙台市の3地点と福島県郡山市の計4地点が上昇に転じた。東北トップは58年連続で仙台市青葉区のさくら野百貨店仙台店前の「青葉通」で、全国の都道府県庁所在地の中では、3年連続で11位だった。
6県の主要商業地(12地点)でみると、青葉通を含む3地点が上昇。宮城県石巻市恵み野2丁目(旧蛇田新金沼)の「石巻工業港曽波神線通り」は5.9%の上昇で、周辺の商業集積が進み3年連続で上向いた。下落は秋田県横手市安田堰添の「国道13号通り」(マイナス10.6%)など6地点。変動なしは3地点だった。
主要工業地(6地点)は、仙台市宮城野区日の出町3丁目が唯一上昇し6.7%のアップ。変動なしが1地点、下落が4地点で、秋田市新屋豊町は16.7%の大幅なマイナスとなった。福島第1原発事故による避難指示区域は算定が困難なため、3年連続で路線価が「ゼロ」となった。
◎復興需要/被災3県改善続く
仙台国税局が1日発表した2014年分の東北の路線価は、岩手、宮城、福島の被災3県が東日本大震災の復興需要に支えられ、沿岸部を中心に改善傾向が続いている実態を示した。一方、青森、秋田、山形は全国的な景気回復などを背景に下落幅が縮小する地域もあったが、上昇に転じるほどの力強さはなく、東北域内の二極化に大きな変化はなかった。
東北の全52税務署別の最高路線価のうち、上昇したのは10地点。前年に続いて上昇した石巻、気仙沼、大船渡3市に加え、仙台市の3地点や宮城県松島町、釜石、郡山、白河の各市で上向いた。
仙台国税局の担当者は「沿岸被災地のほか、移転需要のある内陸部でも上昇した。都市部を中心に、景況感の向上や低金利を背景に不動産投資が活発になっているのではないか」とみる。
横ばいだったのは11地点で5地点増えた。宮城、山形、福島3県の内陸部の主要都市で目立った。逆に下落は31地点で12地点減少した。
東北の地価の動きについて、東北不動産鑑定士協会連合会の小野寺和夫会長は「被災者をはじめ、各県から仙台に人が流入しており、仙台だけが他の地域と異なる動きになっている」と話す。
地価の下落が続く地域が目立つことについて、小野寺氏は「人口の減少に歯止めがかからず、中心商店街が空洞化するなどじり貧状態となっている」と分析。自治体による長期的なまちづくりや人口減対策の必要性を指摘している。