車を買った居酒屋経営者「一生コロナ禍でもいいと思った」…協力金で明暗

新型コロナウイルス感染対策として埼玉県内の飲食店で実施されてきた営業時間や酒の提供に関する制限が、25日に全面解除された。これに伴い、制限要請に従った店に県が支払ってきた協力金については、いったん終了する。ただ、協力金を巡っては「店を続けるためには足りない」という声がある一方、「コロナ禍前の売り上げよりもらえて潤った」という経営者もおり、評価が分かれている。今後、再び制限が必要になった場合に備え、店の実情に合わせた協力金の額の見直しなど、県はよりきめ細かい対応に迫られそうだ。 「北新地のママが志村けんさんに感染させた」というデマの投稿に使われた写真

「一生コロナでもいい」

 「協力金でもうかった。正直、一生コロナ禍でもいいと思った」埼玉県庁

 県北部で居酒屋を経営する50歳代の男性は話した。「要請に従って県からもらう協力金のほうが、売り上げより多かった」という。

 県は昨年12月以降、15期にわたって、営業時間の短縮要請などに応じた飲食店などに協力金を支払ってきた。支払われる金額も時期により異なったが、直近では中小事業者が経営する店には、前年か前々年の売上高に応じて1日あたり2万5000円~7万5000円だった。

 男性の店は20席程度で、従業員1人を雇えば切り盛りできた。月々の家賃は約15万円。光熱費や水道代を入れても、1日2万5000円の協力金で不自由なく生活できた。その上、金銭的に余裕も生まれ、「手元に余った分は貯蓄に回し、最近は車の購入費用にも充てた」と打ち明ける。

 男性によると、周辺の飲食店経営者も似たような状況で「中には制限の全面解除を快く思っていない人もいる」と声を潜める。

多くの飲食店は苦境に

 ただ、こうした店は、ごく一部にすぎない。コロナ禍で、多くの飲食店は苦境に追い込まれた。東京商工リサーチ埼玉支店によると、県内では昨年4月~今年9月、新型コロナウイルスの影響による飲食店の倒産は、負債総額1000万円以上となった業者だけでも27件に上る。

 特にさいたま市などの繁華街にあり、比較的規模の大きい店は家賃や人件費などがかさむ。県からの要請に従わず、午後9時以降も営業し、酒を提供することでしのいできた店もある。

さいたま市大宮区の「大宮南銀座(通称・南銀)」のある飲食店は、約70席を備え、家賃は100万円を超える。従業員も約10人いる。当初は県の要請に従って協力金をもらっていた。だが、協力金だけで経営を続けるのは難しいと、今年7月頃からは、感染症対策を徹底しながら、要請に従わずに営業してきた。

 男性店長(45)は「協力金でもうかっている飲食店があるのは、不平等だと感じる。『飲食店』として一緒くたにされ、それぞれの立場がないがしろにされている」と不満げな様子。「不満の出ない政策は難しいだろうが、県が各地域や各店舗の実情を把握していれば、状況は違っていただろう」と話す。

 こうした飲食店側の声に対し、県の担当者は「コロナで傷んだ飲食店を迅速に支援することが最優先だった。地域や各店の事情を考慮した上で協力金を支給していては時間がかかりすぎてしまい、現実的ではなかった」としている。

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