女性はJR埼京線の最後部車両で、見ず知らずの男たちに囲まれ体を貪られていた。
9月22日までに警視庁池袋署は、電車内での20代女性に対する強制わいせつの疑いで、埼玉県川口市に住む加藤義郎容疑者(34)を逮捕した。同じ女性に下半身を押し当てたとして、東京都迷惑防止条例違反の疑いで無職の50代の男も逮捕されている。
「事件が起きたのは9月15日午前9時ごろです。加藤容疑者は赤羽から池袋を走行中のJR埼京線の車両で女性会社員へ痴漢行為におよびました。女性は恐怖で声もあげられなかったのでしょう。『痴漢です』と音声が出る警視庁の防犯アプリ『デジポリス』で助けを求めました。被害に気がついた他の乗客らが、身柄を池袋の駅員に引き渡したとのことです」(全国紙社会部記者)
女性は電車内で逮捕された2人を含め、不自然に5人ほどに囲まれていたというが、警視庁によると加藤容疑者と50代の男はお互い面識がないという。
「加藤容疑者は女性の下着の中に手を入れ、下半身を触ったとみられています。ドア付近に立つ被害者女性の右斜め後ろに加藤容疑者が、女性の正面には50代の男が立っていたといいます」(同前)
加藤容疑者は「過去にも埼京線で何度かやった」、「混んでいる電車内で若い女性がいたので、ムラムラと欲情して触った」と容疑を認めている。
一方、50代の男は取り調べに対し、「女性を取り囲んでいる男たちがいるのを確認した後、電車の揺れによって、輪に入るようにして、女性の正面に行ってしまった」などと話しているという。だが目撃者によると、この男は不自然に膝を曲げるような格好で立ち、顔が被害者にぶつかるくらいの近さだったという。
「5人ほどに囲まれていたのに逮捕されたのは2人。その時に何人の痴漢がいたのか、警視庁も把握できていない。防犯カメラなどを丁寧に解析し、とことん捜査してもらいたい」
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集団痴漢事件についてこう憤るのは、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏だ。集団での犯行を行った背景には2つの動機が考えられるという。
「まずは捕まるリスクを減らすためです。当然、痴漢は痴漢を捕まえない。現場にいたのが被害者と犯人グループだけで他の一般人がいないとなると、発覚しにくい。また別の理由も考えられます。それは痴漢の腕前をグループ内の人に見せるためということです。痴漢はネットなどで技術をアピールしていることがあります。『俺はうまい』『ここまで触れる』ということを人に見せつける、そういう心理も考えられます」
9月には同じく埼京線で、28歳の男が女子高生を痴漢し、「逃げても無駄」「(盗撮した)写真、拡散してもいい」などと脅迫する事件も発生している。連続する痴漢被害に、小川氏は危機感を覚えているという。
「2017年にはインターネットの掲示板で事前に示し合わせ、同じく埼京線で集団痴漢した事件がありました。一概には言えませんが、今回の犯行もあらかじめ集合する話があったのではないでしょうか。痴漢は基本的に単独犯なので、たまたま同じ車両に集まった可能性はかなり低い。ただ、もし偶然だとすれば、さらに最悪の可能性が考えられます。埼京線の後部車両が痴漢をしやすいなどという情報が広まっているということです。もしそうであれば、今後も犯人が変わるだけで、被害は続く。そういった部分への対策も、警察には求められるでしょう」
コロナ禍での行動制限緩和の一方で、痴漢被害の相談件数が増加してきているという看過できないデータがある。卑劣な犯罪を、これ以上野放しにしてはいけない。