転勤族の街・仙台で新住民向けバスツアー 女性経営者らが企画、記者も同行

「転勤族の街」と呼ばれる仙台市の魅力を転入者らに紹介するバスツアーが6月18日あった。昨年入社の記者は仙台暮らし2年目。「自分も転入者なんですが…」。アピールしてツアーに1日同行させてもらい、参加者の声に耳を傾けた。(報道部・池田旭)

 ツアーは、地元女性経営者有志らでつくる「仙台まちなか女子部」が初めて実施した。40人の定員を大きく上回る申し込みがあり、1台の予定だった2階建てバスを2台に増やして受け入れ、当日は主婦や会社員ら約80人が参加した。

 一行はJR仙台駅を出発。午前は若林区にある震災遺構「荒浜小」と体験型観光農園「JRフルーツパーク仙台あらはま」を見学し、東日本大震災で被災した一帯の復興状況を確かめた。

 同区藤塚に今春オープンした複合施設「アクアイグニス仙台」で昼食を取った後、午後は同区荒町や青葉区のサンモール一番町商店街を巡った。各所では女子部の部員が自らガイドを務め、新住民が仙台の街に親しみを持ってもらうように計らった。

 夫の転勤で福岡県から移り住んだ宮城野区のパート宮川ももこさん(35)は「転勤者同士や地元の人と交流する場は今までなかったのでうれしい。新たな発見もたくさんあり、いい思い出になった」と喜んだ。

 荒町で呉服店を営む女子部事務局の佐藤東代さん(54)は「交流の輪が広がり大成功だった。仙台に来て良かったと思ってもらえるツアーを今後も企画していきたい」と話した。

転入者、「街とつながる場」を渇望

 就職、単身赴任、パートナーの転勤…。仙台暮らしを始めた理由は人それぞれだった。仙台の街の印象を尋ねると、「行ってみたい飲食店が多い」「都会なのに近くに山や海など自然が豊か」「新幹線が通り、空港も近い」など肯定的な意見ばかりだった。

 一方、「自宅と職場以外の第3の居場所がない」「見知らぬ街で友達がおらず、自宅に閉じこもっている」など、街との接点を求める声も多く聞かれた。

 初めてのツアーは、仙台に古くから暮らす商店街のおかみさんらが案内役を務めた。参加者は口々に「こんな充実した小旅行が街の中で楽しめるなんて」と話し、暮らす街への親しみが増した喜びを語った。

 魅力的なスポットがあり、交通アクセスも悪くない仙台。街のにぎわいを増すには、転入者が渇望する「つながる場」の創出が鍵になる。ツアーは季節ごとに年数回行う予定という。交流の機会が増え、仙台が「転入者に優しい街」に進化していくことを期待したい。

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