軽とベンツが絶好調!日本自動車市場の異変 2014年の新車販売

国内の自動車市場が”二極化”の様相を呈している。

1月初旬に自動車の各業界団体が発表した2014年の新車販売統計によると、小型乗用車(排気量660cc超~2000cc以下)が142万台とな り、普通乗用車の台数(143万台)を初めて下回った。一方、軽自動車は前年比7.6%増の227万台となり、全体の販売台数に占める割合が初めて4割を 超えた。軽、小型車、普通車の3類型の中では小型車だけが前年割れで、”独り負け“だ。

存在感が高まる軽自動車では、ダイハツ「タント」やホンダ「N-BOX」といった、室内空間の広さと、燃費や価格を両立させた車種が人気を集めている。登録車(小型車と普通車)に比べて税金など維持費の安さも大きいだろう。

■普通車拡大の裏に輸入車の貢献

普通車では、トヨタ「ノア」「ヴォクシー」などのミニバンに加えて、ホンダ「ヴェゼル」、日産「エクストレイル」といったSUV(スポーツ多目的 車)の好調ぶりが目立った。これらは、小型車よりも価格が高く燃費も劣るが、室内空間の広さや車高が高く運転しやすい点などが支持されているようだ。

普通車カテゴリーには、外国メーカー製の輸入車も含まれる。日本自動車輸入組合によると、2014年の輸入外国車販売は29万196台(前年比 3.4%増)となり、1988年の統計開始以来過去3番目の水準。登録車に占めるシェアは8.8%と、昨年の8.6%を上回り過去最高となった。

小型車の販売減少から2014年は初めて普通車のほうが多くなったが、この数字から輸入外国車の台数を除くと、実は、日本メーカーの普通車の販売台数は小型車よりも少ない。国内の普通車市場は輸入車に支えられている面が小さくないわけだ。

輸入外国車の好調を牽引したのが独メルセデス・ベンツだ。2013年、2014年と相次いで投入した新型車が貢献し、前年比13.2%増の6万 839台と過去最高を記録。メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長がかねて目標として掲げていた6万台を突破した。輸入外国車の年間モデル別トップ20 には昨年発売した「Cクラス」など、過去10年では最多の7モデルが名を連ねた。

2014年に販売された輸入外国車を価格帯別に見ると399万円以下は前年割れだった一方、1000万円以上は前年比で3割増と、3年連続で2ケタ 増。輸入車の中でも二極化が鮮明だ。ベンツの商品構成は200~300万円台の低価格帯を拡充しつつ、旗艦モデル「Sクラス」など1000万円以上のもの もあり、幅広い顧客に対応していることが好調の要因とも考えられる。

■エコカー減税が逆風に?

ただ、2015年は一転して逆風が吹きそうだ。今年度に予定されている税制改正において、エコカー減税が見直されるからだ。これまで2015年度燃 費基準が適用されていたが、4月以降はより厳しい2020年度燃費基準がベースとなる。たとえば車両重量が1トンの場合、これまでガソリン1リットル当た り20.5キロメートル以上だった燃費が、4月以降は23.4キロ以上でなければ、減税が受けられなくなる。

輸入車をはじめとする普通車は軽や小型車に比べて燃費で劣るため、こうした減税基準の引き上げは不利になる。前出のメルセデス・ベンツ日本の上野社長に よると、「これまで、輸入車全体の6割強が減税を受けていたが、税制改正後はそれが3割以下になりそうだ」と言う。2014年は新車市場で二極化が鮮明に なったが、2015年は一転して小型車が再び普通車を抜くという構図になるかもしれない。

(撮影:尾形文繁)

タイトルとURLをコピーしました