軽への乗り換え加速 岩手・宮城沿岸で5万台増

 東日本大震災で津波被害を受けた岩手、宮城両県の沿岸部で、軽自動車を使用する傾向が顕著になっている。人口減にもかかわらず、震災前より計約4万8900台増加した。中心市街地が壊滅するなどし、日常の足として燃費が良く、経費負担の少ない「軽」へのニーズが高まっているとみられる。(野内貴史)
<低燃費に満足>
 ことし3月末現在、両県の沿岸27市町村の軽自動車登録台数は約47万2700台。2010年比でエリア内の住民は約2万7000人減ったが、台数は11.54%増となった。伸び幅は全国平均の9.15%を上回る。
 人口1000人当たりの所有台数を自治体別に見た場合、増加幅の上位は表の通り。151.6台プラスの宮城県女川町をはじめ、三陸沿岸がトップ5を占めた。
 女川町の自営業須田菊男さん(65)は、仕事とプライベート両方に使っていたトラックを震災で失い、12年に中古の軽を購入した。「燃費が良く、空間も広い」と満足げに語る。
 町内では震災後に小型・普通乗用車などが20.5%減った一方、軽は8.9%増えた。須田さんと同様、自家用車が津波で流失し、買い替え時に小型化を図ったケースが多いとみられる。
<福島では減少>
 軽は、都市部を除いて車庫証明が不要という利点がある。取得手続きが比較的簡易で済むため、被災者の間で普及が進んだ側面がある。
 沿岸部に位置する石巻市のディーラーは「近年のガソリン高もあり、ユーザーが普通車に戻ることに抵抗を感じているようだ」と話す。
 同じ被災地でも、福島県沿岸は事情が異なる。
 福島第1原発事故による住民避難が続き、軽の台数は震災前水準に届かない。1000人当たりの台数ベースで浪江、双葉両町が100台以上落ち込むなど、原発周辺自治体は軒並みマイナスとなった。
 岩手、宮城沿岸はインフラなどの復旧が進んでいるとはいえ、復興まちづくりは途上にある。遠方への日用品の買い出しなど日常で使う軽の人気は当分続きそうだ。

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