軽自動車の王者「N-BOX」に何が起きた? 販売ランキングでついに「首位陥落」、その納得理由とは

スペーシア、2年ぶりのトップ復帰

 全国軽自動車協会連合会(全軽自協)は2024年6月6日、2024年5月期における軽自動車新車販売の車名別ランキングを発表した(確報は6月17日)。自動車メーカーなど5社による認証不正に関する報道が目立っていた最中だっただけに、このランキングに関する報道は控え目だったが、驚くべき結果が公表された。

【画像】「えっ…!」これが最新軽自動車「販売台数ランキング」です(9枚)

 ランキング1位となったのはスズキ・スペーシアで、2022年5月以来となる2年ぶりの首位となった。販売台数は1万5160台(確報も同じ)で乗用車・軽自動車を通じてトップだった。2023年11月の全面改良後に好調な販売が続いており、前月の4位から首位へランクアップした。

 一方、前月まで23か月連続で軽自動車首位を守ってきたホンダ・N-BOXの販売台数は1万4582台で2位となり、ついに軽自動車トップの座から陥落した。本稿では、首位に躍り出たスズキ・スペーシアの成功要因と、それとは対照的にホンダ・N-BOXが首位から陥落した背景について、深堀りしてみる。

スペーシアの成功要因

スズキ・スペーシア(画像:スズキ)

スズキ・スペーシア(画像:スズキ)© Merkmal 提供

 全面改良から半年足らずで首位の座を獲得したスズキ・スペーシアの魅力は、どこにあるのか。主な特徴は、

・広々とした車室空間

・リヤシートに標準装備された「マルチユースフラップ」(オットマン機能)が付いた座りやすいシート設定

・スズキの軽自動車として初採用の車線維持支援機能(LKA:レーンキープアシスト)

など、普通乗用車に劣らない安全性能や全車標準装備のマイルドハイブリッドシステムによる低燃費などが挙げられる。また価格も、HYBRID・G(2WD/CVT)が消費税込み153万円からと、低めの価格帯であることも販売増に貢献しているようだ。今回の首位獲得についてスズキ広報は、

「安全性やデザインが評価された」

と分析しているが、ライバルであるダイハツ工業が、認証不正の影響で生産停止に追い込まれたことで、ダイハツの軽需要がスズキへ流れたという見方もできるだろう。

 さらに、スズキが展開している一連のプロモーション施策が奏功したとも考えられる。スペーシアのテレビCMにはタレント・芦田愛菜が起用され、2024年5月CM好感度ランキング自動車部門では2位にランクインし、2024年に入ってから常に上位を維持している。芦田愛菜らが演じる4人家族というイメージが定着し、販売好調につながっているといえよう。

N-BOX首位陥落の背景

ホンダのウェブサイト(画像:本田技研工業)

ホンダのウェブサイト(画像:本田技研工業)© Merkmal 提供

 一方、首位から陥落したホンダN-BOXが苦戦に陥った要因はどこにあるのか。

 ホンダ・N-BOXは2023年10月に2017年以来、2度目となるフルモデルチェンジを実施した。現行モデルが3代目となるが、モデルチェンジ直後にダイハツ工業による認証不正が発覚し、ホンダにとって追い風となると見られていたが、2024年に入ってもN-BOXの販売はそれほど伸びていなかった。

 N-BOXを一言でいうならば、

「質感を徹底的に追求した軽自動車」

といえるだろう。ホンダが普通自動車の開発で培った技術を生かし、従来の軽自動車を超えるクオリティーを目指した。それが広く受け入れられ、高めの価格帯設定でもヒットにつながった。決済を一括管理で事務作業効率化

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 N-BOXの購入層はデザインを重視する傾向があるようだが、今回のカスタムは先代よりもシンプルな印象で落ち着いたデザインとなったことで、一部の購入層が他車へ流れたのかもしれない。

 また、標準モデルは、キープコンセプトで旧モデルとさほど変わらず、新モデルと区別が付かないともいわれているほどだ。モデルチェンジによって、旧モデルとの差別化を求めていたユーザーにとっては期待外れとなり、買い替え需要を十分に喚起できなかったことも、販売が伸び悩んでいる要因に挙げられる。

 ホンダは、日産との戦略的パートナーシップ検討を開始する覚書締結を2024年3月に発表している。詳細はまだベールに包まれたままだが、今後両社が手掛ける電気自動車(EV)や軽自動車などの共同開発が進められる可能性が取りざたされている。ホンダがその一環として、軽自動車試乗での巻き返しを図っていくのか注目していきたい。

日常使いに最適な軽自動車の進化

スズキのウェブサイト(画像:スズキ)

スズキのウェブサイト(画像:スズキ)© Merkmal 提供

 これまでに述べてきたホンダとスズキの2車種に加えて、三菱・デリカミニや、生産が再開されたダイハツ・タントなどは、軽スーパーハイトワゴンと呼ばれるカテゴリーに属する。今や、軽自動車市場の大半を占める主戦場となっており、各社によるモデルチェンジが相次いだ2023年は当たり年といわれた。

 全高1700mm超で、リアにスライドドアを備えるというスタイルが定着し、モデルチェンジごとに機能性や走りが進化を遂げている。一般に軽自動車はセカンドカーのイメージが強いが、“1台目”として購入する層が

「約4割」

を占めており、日常使いとして頼れる各種機能や安全性が、これまで以上に求められる。

 日産・ルークスやダイハツ・タントのモデルチェンジは2025年以降と予想されており、年内は、ホンダ・N-BOXとスズキ・スペーシアの激しいデッドヒートが繰り広げられることになるだろう。

 今後はEVへのシフトも想定されるなか、各社による開発競争で切磋琢磨(せっさたくま)し合うことで、われわれ消費者にとっては、より魅力あるモデルが提供される日を心待ちにしていきたい。

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