農産物、市の検査に依頼殺到 福島、伊達 市民ら自衛

福島市と伊達市のコメから国の暫定基準値(1キログラム当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出され、両市で農産物の放射性物質検査の申し込みが殺到している。福島県による「コメ安全宣言」の後に汚染が発覚し、県の調査の信頼が失墜して食への不安が一気に高まったためだ。ただ測定機の数が足りず、かなりの順番待ちになって市民をいらいらさせている。
 福島市は11月14日、放射線モニタリングセンターを開設し、測定機3台で市民が持ち込むコメや自家栽培の野菜、井戸水の検査を始めた。市内のコメから基準値を超える放射性セシウムが検出されたのは、2日後の16日。
 それから申し込みが急増し、連日250件前後に達した。センターへの電話がつながらず、「3時間以上かけ続けた」と言う人もいたという。
 センターの検査能力は1日30件と少なく、今月1日現在で積み残しは1500件を超えた。これから申し込んでも、検査は来年2月以降になってしまう。
 福島市は先月28日、市給食センターの測定機2台も利用することにしたが、同じ日に伊達市内でもコメの基準値超えが明らかになり、検査依頼が再び殺到。28日以降の4日間に、モニタリングセンターを除き700件を超えるコメの検査申し込みがあった。
 福島市農政課の担当職員は「住民は自分の健康を自分で守ろうとしている。(検査対象外の)スーパーで買ったコメを持ってくる人もおり、県の調査が信用されていないのは明らかだ」と話す。
 福島市は当初、コメの検査は同市産に限っていたが、伊達市産のコメの依頼も多く、対象を周辺自治体に広げている。放射線モニタリングセンターの鴫原和彦所長は「市町村では検査の件数に限界がある。全県的に態勢を整備する必要がある」と訴える。
 測定機6台で農産物の放射性物質検査をしている伊達市でも、約1週間待ちの状況。検査を受けた同市の農業高野富造さん(62)は「県の調査は対象点数が少なすぎて、抜け落ちるコメがあると思っていた。順番を待っても、自分で食べるコメは検査して安心感を得たい」と言う。
 県消費生活課は「不安解消のため、福島、伊達の両市には重点的に測定機を配備していきたい」と話す。今後、県から福島市に3台、伊達市に1台が回される予定だが、時期は今月下旬以降になり、混雑状況は当分、解消されそうにない。

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