近年、西日本で相次ぐ活断層による内陸地震は“前ぶれ”か 西日本は南海トラフ地震発生前の『地震活動期』と専門家 「南海トラフ沿いに『ひずみ』は着実にたまる」

南海トラフは「海と陸が出合う場所」 太平洋の海底にのびる崖

河内・室戸岬(2024年6月1日撮影)

高知県の室戸岬にある展望台。「恋人の聖地」をうたうロマンチックな看板がある場所からは太平洋を一望できます。一方、その看板のすぐ近くには別の古びた案内板が設置されています。「南海トラフ」についての説明です。

河内・室戸岬の展望台(2024年6月1日)

そこには「海と陸が出会い、新しい大地が誕生する最前線」と書いてあり、室戸岬から140km先の沖合いの太平洋の海底に位置していると説明してあります。

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南海トラフは、海側のフィリピン海プレートが陸側のユーラシアプレートの下に潜り込んでいる場所です。この2つのプレートの境界付近が広い範囲で大きくずれるため、巨大地震となります。

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今後30年以内に70〜80%の確率で発生 着実にたまる「ひずみ」

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今後30年以内に70〜80%、40年以内なら90%程度の確率で起こるとされる「南海トラフ地震」…。マグニチュード8から9の「巨大地震」によって最悪のケースの場合、全国で死者は32万人以上に達するとされています。

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広島県が東日本大震災のあとにまとめた被害想定では、最悪のシナリオで、県内でも1万5000人近くが命を落とすおそれがあるとされています。西日本は広く壊滅的な被害を受ける想定です。

スマートホンやカーナビなどの位置情報にも使われるGPSのデータを使い、地盤の動きをミリ単位で解析することで、地震を引き起こす「ひずみ」がどこにたまりやすいのかを研究している京都大学防災研究所の西村卓也教授。南海トラフについて次のように指摘しています。

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京都大学防災研究所 西村卓也 教授
「どんどん次の地震に向けて着実にひずみが南海トラフ沿いに蓄えられつつある。
東日本でも、やはり東日本大震災の前に解析が行われていて、岩手県沖から福島県沖にまで、かなり広い領域にがっちりひずみをためているのはわかっていた。ただそれが一度に割れるとは思っていなかった。
南海トラフについても最悪としてはこれが全部一度に割れるということも考えておいた方がいい。」

西日本で相次ぐ活断層による内陸地震 南海トラフ地震の前ぶれか

京都大学防災研究所 西村卓也 教授

南海トラフ地震が起こる前には、「内陸地震」が増える傾向があるとされています。1995年の阪神・淡路大震災以降、活断層による大地震が西日本で相次いでいるのは、南海トラフ地震発生前の『地震活動期』に入っているからではないかと指摘しています

京都大学防災研究所 西村卓也 教授
「主に中部、近畿、中国、四国、南海トラフから比較的距離が近い所の地震は、南海トラフから非常に大きな影響を受けて、南海トラフ地震の前50年、後10年くらいの間に集中する地震の活動期が知られている」

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昭和のはじめに起きた前回の南海トラフ地震発生前にも、西日本各地で大きな内陸地震が相次ぎました。

京都大学防災研究所 西村卓也 教授
「前回の南海トラフ地震、1944年・1946年のあとしばらくこの地域では大きな地震がなかったが、1995年の兵庫県南部地震以降、鳥取県の中部や西部で地震があったりして、熊本地震を含めて、徐々に地震活動が高まっているのではないかという感覚はある。そういうものが次の南海トラフ地震に近づいているために起こり始めているのではないか、活動期に入っているのではという印象を持っている」

初の「南海トラフ地震臨時情報」発表

南海トラフ沿いでマグニチュード6.8以上の地震が発生した場合や、通常とは異なる地殻変動が観測された場合に発表されるのが、「南海トラフ地震臨時情報」です。

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評価・検討の結果、「巨大地震の発生する可能性が 平常時に比べて高くなっている」と判断されれば、その切迫度に応じて「巨大地震注意」または、「巨大地震警戒」が発表されます。

この情報は、普段の生活を維持することを基本としつつ、「巨大地震注意」では、
地震への備えを再確認すことが求められるほか、「巨大地震警戒」では津波からの避難が間に合わない一部のエリアや、避難に支援が必要な人には、およそ1週間、
事前の避難が求められます。

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臨時情報が出た場合、統計的にはマグニチュード8クラスの巨大地震が1週間以内に起こる可能性は通常より高まっていますが、「巨大地震注意」で数百回に1回程度、「巨大地震警戒」で十数回に1回程度と、実際に起こる確率が決して高いわけではありません。

この情報が出たからといって必ずしも南海トラフ地震が起こるわけではありません。落ち着いて行動してください。

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