途上国に「体育」輸出 東京五輪までに15カ国へ 世界でも珍しい教育システム

文部科学省は平成26年度から、「体育」を開発途上国に普及させるためのカリキュラム策定に乗り出す。
 発育・発達期の子供たちが授業の中で体を動かす体育は、戦後教育の中で日本が培ってきた世界に誇れる文化でもある。同省は今後、アジアやアフリカなどに専門家チームを派遣し、32年までに約15カ国に体育を“輸出”したい考えだ。
 スポーツを通じた世界への貢献は、東京五輪招致の過程で政府が打ち出した「スポーツ・フォー・トゥモロー」構想の中でもうたっている。昨年9月の最終プレゼンテーションで、安倍晋三首相は「2020(平成32)年までに100カ国以上、1000万人にスポーツの楽しさを伝える」と公約した。体育の輸出は、その第1弾となる。
 各学校が運動場と体育館を備え、子供たちに体を動かす場を提供する日本の教育システムは世界的にも珍しい。開発途上国では運動場が未整備の学校が多く「体育」の発想がないという。スポーツ教育に詳しい真田久・筑波大体育専門学群長は「基本的な動作、さまざまな競技に親しむ経験は、幼少期の子供たちには大事。『体育』を世界に発信することは、またとない国際貢献につながる」と指摘する。
 平成26年度は3~5カ国を選定した上で、体育指導の専門家チームを派遣。各国の教育担当官庁やオリンピック委員会(NOC)などと連携し、各国の文化に応じた「指導書」づくりに着手する。各国の伝統的な遊びを取り入れるなど、現地の子供たちが抵抗なく体育に親しめるように工夫する。
 派遣対象国では、まずモデル校を選定し、数年かけて教員の養成を行う。体育が軌道に乗れば、モデル校の近隣地域、さらには全国へと段階的に学校体育を普及させるプランを描く。
 同省は体育の輸出のほか、「スポーツ・フォー・トゥモロー」の実践のため26年度予算案に11億5000万円を盛り込んだ。海外のNOCから推薦された研究生を日本の体育系大学で受け入れ、将来のスポーツ界を担う人材を育てる教育を行うなど、スポーツを通じた人材交流にも着手する。

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