水処理機器販売ベンチャーのエーエスジェイ(仙台市)は、インドネシアの学校で飲料水を提供する事業に取り組んでいる。ヤシの殻を使った簡易浄水器の製造を現地で進め、2018年には機器輸出も始めた。インドネシアは上下水道の普及率が低く、中川一社長(56)は「子どもたちが安心して水を飲める環境を広げたい」と意気込む。
エーエスジェイは13年に中川社長が設立し、社員9人。国内では福祉施設や工場など飲料水を大量に使う施設向けに地下水処理設備の施工や販売を手掛ける。
中川社長は大学卒業後に水処理関連の企業を渡り歩き、大手浄水メーカー社員だった約15年前に仙台に転勤。以前から途上国向けの事業を考えていた。
13年、知人の誘いで初めてインドネシアを訪れた。小学生から大学生相当の年齢の生徒が通うイスラム教系の私立学校には孤児も通っていたが、浄水設備はなく、入浴も食事も汚水でせざるを得ない状況だった。
「人のためになることは商売になる」と考えた中川社長。現地の学校向けに事業を行うため独立し、エーエスジェイを起業した。
飲料用への浄化には40に上る検査項目があり、ろ過や酸化、淡水化を組み合わせた処理が必要。中川社長は培った技術で現地に茂るヤシの殻の炭を使ったろ過機を開発し、西ジャワ州などの学校5校に設置した。
特に地下水の水質が悪い地域の学校には、自社で扱うアメリカ製浄水機器の輸出を計画。日本政策金融公庫仙台支店の融資を受け、18年12月にバンテン州の学校に初めて納入した。今年3月、飲料水の供給を始める予定だ。
合わせて現地で説明会を開くなど、安全な水の大切さを伝える活動にも取り組む。一部の学校では飲料水を地域の住民に販売し、収入に充てる動きにもつながっているという。
インドネシアは人口増加が著しく、水道整備が遅れる学校は約5000校に上るという。中川社長は「水のリサイクルシステムの構築を含め地域の水環境の向上に貢献していきたい」と話す。