通勤時間が長い人はパッと目を引く広告を好む?プラットフォーム利用実態のリアル

テレビ視聴率の印象が強いビデオリサーチが、実はデジタルマーケティング領域へのソリューション提供も長年担っていることはご存知だろうか。本連載では、「人」「モノ」「メディア」の3つの視点で生活者を捉え、詳細分析ができる大規模調査データベース「ACR/ex(エーシーアール エクス)」を活用し、変化し続ける生活者のリアルを明らかにしていく。今回は「プラットフォームの利用実態」をテーマとした分析結果を紹介する。

目次

YouTubeをはじめ、人気プラットフォームの地位はより盤石に

 ビデオリサーチが提供する大規模調査データベース「ACR/ex」を活用し、変化し続ける生活者のリアルを明らかにしていく本連載。第1回は、「プラットフォームの利用実態」をテーマに分析を行った。

 まず、ネットの利用時間量を見てみよう。スマホが世の中に普及して久しいが、1日あたりのネット利用時間量はほぼすべての年代において5年連続で増加している(図表1)。

図表1

 そして想像通り、デバイス別の利用時間はPCが横ばいなのに対し、スマホは年々増加している(図表2)。20代以下ではPCでの利用が減少傾向を見せ始めており、本格的な「PCよりスマホ」時代の到来を予感させる。

図表2

 一方で、利用サイト・アプリをランキング化してみると、15~69才男女全体で見た場合5年間ほぼ変動がないことが明らかに(図表3)。ただし、利用率のスコアを見ると全体的に上昇傾向で、たとえばYouTubeは60.3%→64.1%→67.3%と年々利用率が上がっており、“不動の人気プラットフォーム”の地位がより磐石になっていく様子が見て取れる。

図表3

 20代女性の場合は少し変動があり、2014年はFacebookが5位にランクインしていたが2016年にはTwitterになり、2018年ではTwitterとInstagramの2つへ。LINEもあわせると上位5位の中3つがSNSとなり、年々SNSの比重が高まっていることがわかる。

「働くママ」と「専業ママ」、特徴的な利用サービスの傾向は?

 先の調査結果は、読者の皆さんはご自身の経験からも、納得感のある結果ではないだろうか。ここからはさらに、ターゲットを細分化して、プラットフォームの利用実態のリアルをみていく。たとえば同じ「ママ」でも、「働くママ」と「専業ママ」ではどのような違いがあるのだろうか?

 まず、「働くママ」と「専業ママ」ぞれぞれのネットの利用時間を見てみると、やはり時間的余裕が生じやすい「専業ママ」のほうが多かった(図表4右上)。一方で有料サービスの利用状況を見ると、自由に使えるお金をより多く持つ「働くママ」のほうが親和性が高いことが明らかに(図表4右中央)。

図表4

 また、よく使うコンテンツジャンルやサイト・アプリにも非常に大きく特徴が出る結果となった。

「働くママ」が多く利用するコンテンツジャンルは「音楽」「スケジュール・カレンダー管理」「金融・ファイナンス」系。「音楽」の利用率が高いのは、通勤など1人で行動する時間が「専業ママ」より長いことに起因すると考えられる。逆に、「専業ママ」は「ゲーム」や「コミック・電子書籍」の利用率が高い。子どもと一緒にいる時間が長い分、子どもの声や様子をうかがいながらも利用できることが利用率の高さに現れている可能性がありそうだ。

 利用サイト・アプリランキングでは、ランキングの上位ラインアップには大きな差は見られないものの、細かく見てみると下記のような嗜好の違いが多数浮かび上がった。

  • 「働くママ」はGoogle派、「専業ママ」はYahoo! JAPAN派が多い
  • 「働くママ」はビジネスシーンの会食でも便利な「食べログ」利用が多い一方で、「専業ママ」は子どもと行きやすい「マクドナルド」利用が多い
  • 「専業ママ」はクックパッドの利用率が「働くママ」より10pt以上高い

 上記のような違いをあぶりだすことで、たとえば「働くママ」向けに“サブスクリプションでの音楽配信サービス”を作ったら受容性が高いかも!?など、新たなビジネスチャンスの発掘や仮説検証に活かすことができるだろう。

サブスクサービスへの課金率が高いユーザー像とは?

 続いて、ここ最近ブームとなっているサブスクリプションモデル(以下、サブスク)。そのユーザーにフォーカスして、プラットフォーム利用動向をみてみよう。

 NetflixやHuluをはじめとする動画サービスは、サブスクモデルが早い時期から浸透しているカテゴリーといえるだろう。たとえば、動画サービスのサブスク利用者が“他に”課金しているアプリジャンルが何か調べてみると、1位は音楽系で動画サービスのサブスク非利用者の約3倍の課金率を誇り、それ以外にも全般的に課金率が高いことがわかる(図表5)。

図表5

 また、3位の電子書籍系や5位の電子雑誌など、紙媒体に由来する電子サービスへの親和性が高いことも特徴的だ。新たにサブスクモデルでのビジネスを検討する際に狙うべきターゲット像の参考となるだろう。

通勤時間の長さが、プラットフォーム利用に及ぼす影響

 読者の皆さんは、通勤中どのようにネットを利用しているだろうか。筆者は自宅が勤務先に近いため通勤時間中はまったくネットを使わず、音楽しか聴かないのだが、同僚に話を聞くと、「通勤中に自宅でDLした動画を見る」「SNSのチェックは通勤電車の中で行うことが多い」と言った声をよく聞く。

 そこで、20~30代女性会社員を通勤時間「30分未満」「30分~1時間未満」「1時間以上」の3ターゲットに分けて比較してみたところ、やはり通勤時間が長い人のほうがYouTubeやSNSの利用量が多かった(図表6)。

図表6

 興味深いのは好きな広告テイストだ。通勤時間が長い人は、電車の中などで時間を潰していると考えられるため、ゆっくりと1つの情報を見る時間的余裕があるはずだが、広告のテイストはじっくり商品特徴を伝えられる説明型の広告よりも「何これ?」と目を引くような、パッと見ですぐ理解できる広告を好む傾向にある。普段から多くの広告・情報を浴びている分、インパクト重視のコミュニケーションのほうが彼らには刺さりやすいようだ。通勤時間帯での広告配信や、交通広告のクリエイティブ作りへのヒントとなりそうだ。

見込み顧客の「前」段階にいる人の囲い込みが重要

 One to Oneマーケティングが一般化した今日、自社サイトにアクセスした人や自社商品ジャンルに関連する単語を検索した人などを「見込み顧客」として囲い込むための仕組みづくりに、多くの企業が熱心に取り組んでいる。

 しかしながら、自社の売上をさらにあげていくためには、見込み顧客になる「前」段階にいる人をどう囲い込むかが重要だ。言い換えれば、どのトリガーを引けば見込み顧客になってくれそうか、そのトリガーポイントをいち早くあぶりだすことが肝要である。そのためには、世の中全体の動きと狙うべきターゲットの特徴を広い視野をもって見続けることが必要だろう。

 次回は、「動画広告」をテーマに、動画フォーマットの違いによるユーザーの受け止め方や動画の尺の許容範囲等、動画広告制作のヒントとなる示唆をお届けする予定だ。

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