遅すぎた日本政府の対応…東京五輪本番に“感染パニック”襲来危機

拡大が止まらない新型コロナウイルスによる肺炎。中国政府が27日から、海外への団体旅行禁止の異例の措置を打ち出す一方で、世界中で死者・発症者は2800人超と、増加の一途。日本国内でも感染者の確認が相次ぎ、このまま感染拡大を食い止められなければ、半年後に控える東京五輪はパニック必至。無事に開会を迎えるのは困難な状況になりつつある。

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 安倍首相は26日、主だって感染が広がっている中国・湖北省武漢市にチャーター機を派遣、滞在する日本人のうち希望者を帰国させる方針を表明した。

 24日に厚労省は〈我が国では人から人への持続的感染は認められていません〉とした上で、過剰に心配しないよう呼び掛けたばかり。水際対策も、中国からの航空機の乗客に自己申告を促す「健康カード」を配布するといった“弱腰”だった。それが一転、「異例のチャーター機派遣」に踏み切ったのは、事態が激変したからだ。

「今年の訪日客4000万人を目標に掲げる安倍政権にとって、インバウンドが見込める中国人観光客は文字通り“太客”です。シャットアウトすれば、経済へ大打撃となり、また、今春には習近平国家主席を国賓として招く予定でもある。だから、これまでは『強い対策』に及び腰だったのでしょう。ところが、中国政府は旅行シーズンの春節にもかかわらず、国内外すべての団体旅行を禁止する異例の措置に出た。衛生当局も会見で『(新型肺炎の)感染力が強まっている』と発言。もはや日本政府も悠長なことは言っていられなくなったということです」(外交関係者)

■遅すぎたチャーター機の派遣

 いよいよ安倍首相も尻に火がついたわけだが、「時すでに遅し」ではないか。海外から選手、観客が大挙する東京五輪の開幕はわずか半年後。悪影響は避けられそうにない。コロナウイルスが原因で2002年11月に中国で発生した重症急性呼吸器症候群「SARS」が終息したのは、翌年7月のことだった。発生から封じ込めに約8カ月かかったのだ。新型ウイルスの終息も五輪に間に合わない可能性がある。

「心配なのは、感染者が南半球のオーストラリアで4人確認されたこと。オーストラリアは現在、夏真っ盛りで、3月ごろから秋に入る。五輪期間中は感染症が流行しやすい冬季。選手や観客に感染者がいれば、東京五輪でさらに拡大を招く恐れがある」(厚労行政関係者)

パンデミックの“引き金”に…

 新型ウイルスの潜伏期間は最大14日間というから、水際対策にも限度がある。拡大に歯止めがかからなければ、東京五輪がパンデミックの「引き金」になる恐れすらあるのだ。医学博士の左門新氏は「情報が少ない現状では確たることは予測しがたい」と前置きした上で、こう話した。

「一般的に、高温多湿の日本の夏はウイルスが活発化しにくい環境と言えます。しかし、全てのウイルスがそれに当てはまるわけではない。夏風邪を引き起こすエコーウイルスに代表されるように、夏季に活発化するウイルスも存在します。今回の新型ウイルスは潜伏期間が長めとみられますから、南半球で感染した人が潜伏期間中に自覚症状がないまま、大会期間中に来日してしまうことも考えられる。大きな国際イベントでウイルスが開催国に持ち込まれてしまうケースは、非公式なものを含め、多々起きているのです」

 このままでは、開会したはいいが、各国そろって「チャーター機で帰国させます」と言い出してもおかしくない。選手が集まらず「中止」なんて事態になれば、赤っ恥もいいところだ。

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