過去自慢&他人批判ばかりの「ジジイ社員」、なぜ急増?高学歴&一流企業勤務に多い?

「老害」とは、世代交代がうまくいかずに時代遅れとなった組織に対して使われる言葉だ。それが転じて、古い価値観にとらわれて組織の成長を妨げる年長者を意味するようにもなった。程度の差こそあれ、どの会社にもそんな上司世代の人たちがいることだろう。

では、もしあなたが「このおじさん、仕事の邪魔ばっかりして、なんのために会社にいるのかな?」と若手から思われているとしたらどうだろうか。

管理職ではあるものの、特に成果を上げるわけではない。そのくせ、会社や周囲の変化を嫌い、他人を否定したがる。そんな迷惑な上司世代の男性=「ジジイ」が増殖しているという。なぜ今、ジジイが増えているのか。そうならないための働き方とは何か。

●若手を批判して定時に帰る「ジジイ」の正体

「口を開けば過去の自慢話ばかり。『俺らの頃は残業も深夜まで会社に残るのが当たり前だったけど、今の子はホント楽だよね』と、さも『長時間労働してきた自分は偉い』とばかりにドヤ顔で語る。そのくせ、定時で即帰宅するんです」

そう言ってため息をつくのは、通信系企業に勤務するYさん(26歳・女性)だ。批判の矛先は、40代後半の男性上司。Yさんや同僚の若手社員が何を提案しても受け入れず、「俺の時代はこうだった」と古いやり方に固執するという。

「このように、保身だけを考えて会社にしがみつき、自分からは行動せず、ただ他人を批判するだけの年長者を、私は『ジジイ』と呼んでいます。この人の言動は典型的なジジイで、まさに『ジジイの壁』にはりついているといえます」

こう語るのは、『他人をバカにしたがる男たち』(日本経済新聞出版社)の著者で健康社会学者の河合薫氏だ。

「ジジイには、『成長や挑戦を嫌う』『仕事に対してやる気がない』という特徴があります。こういう人物がいると、全体の士気が下がる。今、企業にはこのような保身のかたまりであるジジイが非常に増えているのです」(河合氏)

●人をジジイ化させる「そこそこの学歴&実績」

どんなタイプが、ジジイになりやすいのだろうか。河合さんによると、意外にも「高学歴で一流企業に勤めているようなエリート」だという。

「そこそこのいい大学を出て、そこそこに仕事をしてきたような人こそ、ジジイになりやすい印象があります。やっかいなのは、この『それなりに俺はやってきた』というプライドです。年齢とキャリアを重ねると、不安を簡単に口に出せなくなり、誰かに相談することもできない。かといって、自分から行動を起こすような勇気もない。今まで培ってきた『そこそこの実績』を失いたくない、という保身によって身動きが取れなくなってしまっているのです」(同)

こういうタイプがプライドを保つには、「○○大学出身のくせに」「女のくせに」などと出身大学や性別で他人を判断し、バカにするしかない。

最近よく問題になる企業CMの炎上騒動も、ある研究報告によれば「役職に就いた40代以上の男性が炎上の中心になっている」という。「そこそこの大学出身」「そこそこの会社勤務」の男性は年を重ねると他人をバカにしやすいという傾向とも合致する。

こうしたジジイが増えている背景にあるのは、将来への不安感だ。

「リーマン・ショック、東芝の不祥事、さらにメガバンクが打ち出した大規模な人員削減など、今やエリート会社員にとってもリストラや窓際族は他人事ではありません。終身雇用や年功序列といった日本の企業モデルは、とっくに崩壊しています。その不安感から、挑戦することに恐怖を覚え、ネガティブな感情ばかりが先立つようになったのでしょう」(同)

また、ジジイになる人たちは組織のなかで岐路に立つ世代でもある。

「大きな組織では、同期が出世コースを進んでいたり、転職や起業で成功している同世代がいたりと、30代後半あたりから自分の立ち位置がはっきり見えてきます。年下の上司が当たり前になり、若手に追い抜かれる怖さもある。そのため、『自分はこのままでいいのか?』という焦りや不安が生まれ、自分のなかで確かなものである学歴や役職に固執するようになるのです」(同)

●ジジイ化しない、魅力的な男性の共通点

もっとも、この「ジジイ化」は、その迷惑を被っている若手にとっても他人事ではない。

競争が激しく先が見えない今の社会では、非正規雇用や失業といった事態に誰でも直面する可能性がある。抱えている不安感に年齢やキャリアは関係なく、今は「職場のジジイ」に対する愚痴をこぼす若手社員も、いつジジイ化しても不思議ではないのだ。

河合氏は「ジジイにならないためには、『首尾一貫感覚』を身につけることが重要です」と指摘する。これは、簡単にいえば「人生のつじつまを合わせる力」のことだという。

「私はフィールドワークのなかでさまざまな会社員や経営者の方の話を聞いてきましたが、ジジイ化しない人には、スポンジのような吸収力を持ち、どんな状況に置かれてもポジティブでたくましいという共通点があります。また、自分を俯瞰できるので変化する現実への適応力も持っている。そういう人は、歳を重ねて上司世代になっても、たとえどんな状況になっても、イキイキと日々を送って成長していくことができます」(同)

キャリアを重ねて「そこそこの実績」を残し、それでも謙虚な姿勢を貫くというのは意外と難しい。しかし、どんな状況で誰が相手であっても、「何か吸収しよう」という意欲があれば、「いつまでも魅力的な男性でいられる」と河合氏は言う。

念のために言っておくと、「自分はジジイじゃないから大丈夫」と考えるのは禁物だ。河合氏によると、「現実にジジイ化している人ほど、『絶対に自分はジジイじゃない!』と強く思っているもの」だそうだ。

自分も、迷惑なジジイかもしれない。そういう自覚や謙虚さを忘れ、周囲の変化に対して否定的なことを口にし始めたら、そのときは要注意だろう。

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