政府は、ガソリン需要の縮小で経営悪化が見込まれるガソリンスタンドの支援策を強化する。店舗を集約したり、自治体が整備して企業に運営を任せる「公設民営型」店舗を設けたりした場合に補助金を出す事業が柱だ。電気自動車(EV)の普及が見込まれる今後も、当面はガソリン車が一定数残るため、供給網を維持する必要があると判断した。 【写真】4年間、一本の列車も止まらぬまま…県境の「秘境駅」廃止(写真:読売新聞)
経済産業省が2022年度の概算要求で14億円を要求する。補助金を出すケースとして、利用が減った店舗の集約のほか、幹線道路沿いをはじめ利用増が見込める場所へ新設する場合も想定している。コンビニエンスストア、飲食店の併設など、経営の多角化も促す。店舗対策だけでなく、後継者や人手の不足に対応するため、利用客の監視業務を省人化できる技術の開発を支援する。
国内のガソリンスタンド数は20年度末に約2万9000店と、1994年度のピーク時に比べて半減した。エコカーの普及による燃費の向上や若者を中心とした車離れが進み、ガソリン需要が大きく縮小したためだ。販売量は2004年度の6148万キロ・リットルから、20年度には約3割減の4523万キロ・リットルとなった。
政府は世界的に進む脱炭素の流れを受け、35年までに国内で販売されるすべての新車をEVやハイブリッド車(HV)といった「電動車」にする目標を掲げる。ガソリン需要減の加速により、事業の将来性が見通せなくなったスタンドの廃業が一段と増える懸念がある。
一方で、公共交通機関が未発達の地方を中心に、移動手段としてガソリン車が今後も欠かせない人々は多い。すでに過疎地ではスタンド不足が深刻な問題になっている。自家用車への給油だけでなく、寒冷地での高齢者への灯油配送など、生活にも影響が出始めているという。