道の駅は飽和状態、問われる真贋<ビズラボコラム・田口庸友>

「今月の数字」171=東北の道の駅の数

 今年は「道の駅」の制度創設(1993年)から30年です。東北ではこれまで171駅が登録され、都道府県別の登録数でも岩手、福島、秋田の3県がベストテン入りしています。

 東北各県の観光統計(個別開示のない岩手県を除く)によると、2019年の入込数では12駅が100万人を超えています。旅行情報誌「じゃらん」の全国の「道の駅ランキング」(22年度)では5駅が10位までに入っています。東北の土地の広さ(国土面積の17・7%)や道路の長さ(全国総延長の13・6%)から当然にも思えますが、東北の道の駅は質、量ともに高い優位性があると言えそうです。

 道の駅は休憩、情報発信、地域連携といった機能が登録要件です。当初はドライブインのイメージが強かったせいか、初回登録の東北の13駅はほとんどが都市間や県境の長距離ドライブの休憩拠点でした。

 しかし、東北に道の駅ほどの人を集められる施設はそうそうなく、「車社会」に暮らす地元住民にとっても集まるのに便利でした。道の駅は次第に、外部向けに地場産品販売や地域の魅力PRを行う「観光拠点」や、地域住民が買い物や交流を楽しむ「交流拠点」としての性格を強め、「立ち寄る場所」から「目指す場所」へと変わっていきます。配置設備も日帰り入浴やキャンプ場、博物館、キッズ広場とバリエーションを広げ、いまや地域で随一の集客力を誇る観光・交流施設となっています。

 成功事例を目の当たりにし、地方創生の切り札にと道の駅設置を検討する自治体は少なくありません。しかし、既に飽和状態で希少性が薄れる中、運営・維持費を賄える集客・収益を維持する難易度は高くなっています。また近年は防災拠点など公共性や社会性の強い機能の発揮も期待され、その費用便益分析はますます計算が難しくなっています。もはや設置すればめでたしの「打ち出の小づち」ではあり得ません。

 PRしようとする地域資源の価値や魅力、また地域での必要性が「ホンモノ」かどうか、その真贋(しんがん)こそが三十路(みそじ)を迎えたキラーコンテンツの成否の鍵を握ることになるでしょう。(七十七リサーチ&コンサルティング首席エコノミスト)

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