6月15日に厚労省は、中国から輸入された生鮮ニンジンから残留農薬基準値を上回る農薬「トリアジメノール」が検出されたと公表した。厚労省は「どこにどれだけの数量が流通したのかは公表しておりませんが、一部が国内に流通したことは事実」(医薬・生活衛生局食品監視安全課輸入食品安全対策室)と認めた。
いったい中国産食品はどのような商品やメニューとして消費者に届いているのだろうか。
厚労省が公表する「輸入食品等の食品衛生法違反事例」(2018年4月~2020年6月)から、消費者問題研究所代表の垣田達哉氏の監修のもと、上位40食品の代表的な商品・メニュー、使われる主な業態を別掲のリストにまとめた。ここに記した食品がすべて危険というわけではもちろんなく、あくまでリスクを正しく知るための参考にしていただきたい。
違反件数の多さが際立つのが、落花生や煎ったピーナッツだ。合計29になる違反事例のすべてで、カビが生成する化学物質「アフラトキシン」が検出された。垣田氏が解説する。
「アフラトキシンは強い発がん性物質で、世界的に規制対象になっています。ピーナッツは輸入量シェアの約4割を中国が占めていて、バターピーナッツから外食の炒め物まで、幅広く使われます」
野菜類も違反リストの上位を占める。違反件数3位の生鮮タマネギからは、殺虫剤の成分である「チアメトキサム」が検出されている。
「中国のタマネギは、現地の加工工場で皮を剥かれてから日本に輸送されることが多く、日持ちするうえ安価で手軽に使えるので、牛丼やファミレスなどの外食チェーンで重宝されます。加工食品のレトルトカレーで使われることも多い」(同前)
ショウガからもタマネギと同じく殺虫剤「チアメトキサム」が検出されている。
「中国産ショウガは、寿司チェーン店のガリや牛丼の紅ショウガとして使われます。スーパーで売っているショウガの酢漬けは産地表示されるが、カツオのたたきに添えられる『おろしショウガ』は表示義務がなく、実は中国産というケースがある」(同前)
違反件数10件のブロッコリーも「付け合わせ」がメインとなる。
「以前は米国からの輸入が多かったが、近年は中国産がシェアを伸ばしています。外食のステーキやハンバーグの付け合わせとしてニーズがありますが、ステーキについては〇〇産牛肉と表示している店でも付け合わせの野菜は中国産と表示していないことも多い」(同前)
ビールのお供として夏に需要が高まる枝豆も中国産の可能性が。
「解凍すればすぐ食べられる手軽な冷凍食品で、居酒屋チェーンのお通しとしてよく使われます」(同前)
肉類の代表は「鶏」である。食の安全に詳しいジャーナリストの小倉正行氏が指摘する。
「鶏肉調整品(加熱処理された焼き鳥や唐揚げ、フライドチキンなど)の輸入額はタイと中国でほぼ100%を占めています。スーパー・コンビニの惣菜や、居酒屋チェーンの安い焼き鳥など、加工されたものは中国産であるケースが多い」
違反事例では、冷凍焼き鳥から糞便系大腸菌群や細菌が検出された。海産物も同様に糞便系大腸菌群や細菌が原因で違反事例となっている。
「居酒屋の定番メニューであるアサリの酒蒸しは、中国産の冷凍食品の可能性が高い。冷凍ゆでガニのフレークはカニサラダや回転寿司のカニネタなど多方面で重宝されます。惣菜や弁当の定番である白身魚のフライも、中国産の冷凍食品というケースが目立ちます」(垣田氏)
※週刊ポスト2020年7月24日号