違法コピーソフト販売の北朝鮮IT企業を放置する「ヤフオク!」の罪

 北朝鮮のIT業者が、日本のネットオークション「ヤフオク!」の公認ショップ「オークションストア」で違法コピーソフトを大量販売していることが分かった。
 今年1月、マイクロソフトの総合ソフト「Office」を正規版と思って購入した被害者の会社員男性が独自に調査。販売者を特定したところ、その実態が浮かび上がってきたものだ。
 男性は「新品未開封Microsoft Office 2010 日本語版」というタイトルの商品を約4,000円で落札。商品説明には「正規版」と明記されており、販売者が都内の株式会社となっている「オークションストア」でもあったことから信頼したが、商品はなぜか中国から国際便で届き、その中身はカラーコピーしたパッケージにDVD-Rが1枚入っているだけという、説明書ひとつないひどいシロモノ。男性はすぐに出品者に「これはコピーソフトだ」と訴えたが「ちゃんと動作するから問題ない」とはぐらかされて、以降は返答がなくなったという。
「ストア情報に書かれた住所に行ってみましたが、明記されていた会社はなく、ただの民家だった」と男性。
 この件をヤフオク!にメールで伝えたが「出品される商品やサービスの管理につきましては、各出品者に行っていただいており、ストアについても同様となっております」と、まるで無責任な回答だったという。
「さらに苦情を伝えても“弊社では明白な権利侵害が発生しているという事実を正確に確認できない”と、こちらの話をきちんと精査する姿勢はなく、挙げ句“こちらに連絡を”と伝えてきたのがユニオン・デ・ファブリカンというヨーロピアンブランドの偽造品を取り締まっている、コピーソフトとは無関係な団体。まるでこっちの話を聞いていないのがよく分かった」(同)
 3月、男性は仕事で中国に出張する機会があり、そこでコピーソフトが送られた発送元になっていた瀋陽市大東区の住所を尋ねたところ、ここがなんと北朝鮮と密接に仕事をしているIT関連業者であることが分かったという。
「この会社が設立されたのは09年ごろで、ITに力を入れる北朝鮮の業者が共同研究開発で提携した形になっていて、北朝鮮科学院という組織から十数名がこの会社に派遣されていることが分かりました。ただ、それは表向きで、やっていることは研究費を稼ぐ名目でのコピーソフトの大量生産。日本語版だけでなく、世界各国のバージョンや、Windows8のコピー品などをダンボール詰めして運ぶのを見かけました」(同)
 ここで生産されたコピーソフトは正規版と同様に使用できるだけにソフトウェア業界にとっては深刻なものだが、「通報してもまったく対応する気がなく、いまだ出品を放置したままのヤフオク!も悪質」と男性。中国を介しているとはいえ、経済制裁中の北朝鮮に利益をもたらす行為となっていることも問題だろう。
(文=鈴木雅久)

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