遣欧使節資料、記憶遺産に ユネスコが登録決定

文部科学省は19日、仙台藩祖伊達政宗の命を受けて欧州に渡った支倉常長が持ち帰った「慶長遣欧使節関係資料」(仙台市博物館所蔵)など国宝2件が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産に登録されたと発表した。世界史に重要な意味を持つと高い評価を受けた。
 慶長遣欧使節関係資料は、政宗の使節として1613年に石巻を出港しスペイン、ローマを訪れた常長が持ち帰った資料。日本とスペインの政府が共同推薦した。国宝に指定されている全47点のうちローマ市公民権証書と常長の肖像、ローマ法王「パウロ5世」の肖像の3点が登録された。
 ローマ市公民権証書は、ローマ市議会が常長に公民権を与え、貴族に列することを認めた文書。政宗や仙台の記載もある。常長の肖像は、教皇庁と関係が深いフランス人画家の作品とみられ、実在の日本人が描かれた最も古い油彩画とされる。
 常長が謁見(えっけん)したパウロ5世の肖像画は、使節の足跡を示す重要な証拠。常長は帰国後、政宗に献上した。
 ユネスコは「欧州の人々が別の文化圏の存在を理解するのに使節団が果たした役割の重要性を示す」と評価した。ことしは使節が出港して、ちょうど400年となる。
 ほかに登録された国宝は、藤原道長の自筆日記「御堂関白記」(京都市の陽明文庫所蔵)。平安時代に政治の実権を握った道長が政務や生活の様子をつづった。
 記憶遺産は、世界の貴重な記録や古文書を保護するユネスコ事業。国内では、福岡県田川市などが推薦した「山本作兵衛炭坑記録画・記録文書」が2011年に初登録されて以来となる。
 今回登録された記憶遺産は、日本の2件を含め計54件。ポルトガルの航海家バスコ・ダ・ガマの日記や、中南米の革命家チェ・ゲバラが書き残した文書などがある。
 文科省は今年5月、京都市の東寺に伝わってきた国宝「東寺百合文書」も15年登録を目指して推薦すると発表している。
[慶長遣欧使節関係資料]仙台市博物館が所蔵し国宝に指定されている。政府はロザリオ、短剣などを含む全47点を記憶遺産として推薦したが、文書や絵画などが登録対象のため、最終的にローマ市公民権証書、常長、ローマ法王の肖像の3点に絞った。共同推薦したスペインは、同国内に残る常長や宣教師の書状などを推薦した。

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