遺伝子が放つ「匂い」で、運命の人を嗅ぎ分ける

春は「出会い」の季節。就職や転勤、進学などをきっかけに、新たな友人や同士、時にはロマンスのお相手と巡り会うことも…。
突然ですが、初めて出会った異性の好き嫌いを、アナタはどうやって判断していますか? 顔やスタイルから性格、人によってはファッションセンスに財力まで、とにかくいろいろな意見があると思います。でも、これからは、相手の「匂い」を最優先の判断基準とすると良いでしょう。なぜなら人間は、自分と相性の良い遺伝子を保有する異性を「匂い」で判別する能力を、生まれながらに有しているからです。
このことを証明したのが、過去にスイスで行われたユニークな実験の結果でした。まずは、44人の男子学生に2日間、同じTシャツを着用し続けてもらいます。次に、そのTシャツの匂いを50人の女子学生に嗅いでもらい、「大好き」から「大嫌い」までを10段階で評価してもらいました。その結果、女子学生は、免疫をつかさどるMHCという遺伝子の型が自分と遠い人の匂いを「好き」と判断し、それが近い人の匂いを「嫌い」と判断したのです。
このMHCという遺伝子は、前述のとおり生物の免疫をつかさどり、ウィルスや病原体といった対外からの侵入者を捕まえる遺伝子。その型は数千万とおりあるとも言われ、他人との差異を「遠い・近い」という概念でとらえることができるものです。そして、体内に存在するMHCの型が増えれば増えるほど免疫のバリエーションが豊富になり、捕まえられる外敵の種類も多くなります。つまり、MHCの型が遠い男女の間に生まれた子どもは、先天的により多くの病気に対抗できる強いカラダを持って生まれてくるということ。それを知っている人間の本能が、匂いの「好き・嫌い」というカタチで、より優秀な遺伝子を残せる相手を自分自身に知らせていたのです。
この話が身近に感じられる例を、いくつか挙げてみましょう。
よく「ひと夏の思い出」という言い方で、夏場の色恋沙汰を表現することがありますよね。これは、夏休みのおかげで気分が開放的になるからではなく、気温が上がることで人がより汗をかくようになるうえ、肌の露出も増えるので、人々が好きな匂いを判別しやすくなるからだと考えられます。
また、思春期の女のコが「お父さんは臭いから、脱いだ服を一緒に洗濯したくない」なんて言って母親を困らせることがありますが、父親の体臭を不快だと感じるのも、家族のMHC型が近いことに起因するのではないかと言われています。
そして、異性へのアピール手段の1つである香水も、本来は「イヤな匂いを消すため」のものではなく「自分の匂いを引き立てるため」に生まれたのだそうです。時間が経つに連れて、匂いが人それぞれ変わっていく ─── そんな香水の性質も、この話を聞くととても合点がいきますよね。逆に、いくら良い香りのものでも、体臭が消えてしまうほどプンプン匂わせている人を不快に感じるのは、香水の本来の役割を無視しているからかもしれません。
ということで、これからは、自分の容姿や思考と同じように体臭にもプライドを持ち、それをしっかり主張して生きていくことをオススメします。そうすることで、遺伝子レベルで自分と相性の良い異性が、アナタの魅力をちゃんと嗅ぎ取ってくれるでしょう。…とはいえ、お花見の席で初めて出会ったステキなあの人の匂いをいきなりクンクンしすぎてしまうと、自分の匂いを嗅いでもらう前に嫌われてしまうかもしれません。くれぐれも注意してくださいね。
(奥洋介)

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