都会のスズメが減っている-。「日本野鳥の会東京」(新宿区新宿)は昨年初めて、都立日比谷公園(千代田区)に住むスズメの全数調査を実施したところ、2回の調査で予測の3分の1程度しかいないことが分かった。営巣場所や餌となる昆虫の減少が原因とみられる。同会では22日に結果報告会を行い、自然との共生を考えたいとしている。
昨年の調査は、スズメの繁殖期である5月と越冬期に入った11月に行われた。同公園を6コースに分け、調査員6人が皇居側から時速約2キロで同時に出発。左右25メートル、上空50メートル以内で見つけた鳥の種類と数を地図に書き込む方法で、約2時間かけた結果は5月が115羽、11月が141羽だった。
5月は繁殖期のため姿を見せないと考えられたが、11月もほとんど変わらなかった。「日比谷公園のスズメは予想の3分の1しかいなかった」(同会)という。
同会では、減少の原因は、(1)スズメは屋根瓦の下やわらぶき屋根など人家に巣をつくるが、戦後の建築物はスズメが潜り込むすき間がなく、営巣場所が減った(2)スズメの餌である植物の種子や昆虫などが減り、子育てに必要な栄養が十分に得られなくなった-などとしている。
現代のスズメは信号ポールの上、排水孔、煙突の中などに巣を作るが、高気密の建物が並ぶ都会で、身近な地域で餌を得ながら個体数を維持するには限界があるようだ。
調査をまとめた川内博研究部長(61)は「フランスやイギリスでも都会のスズメが減少し、ロンドンでは懸賞金をかけて原因を究明したが、はっきりしないまま。現在、街中で見つけるのは困難な状況になってしまった。東京でも将来、同じことが起こったとき、経過を明らかにするためにも、今後10年程度は全数調査を続けたい」と述べ、東京の野鳥対策を考えたいとしている。
この結果は、同公園内で行われる「緑と水の市民カレッジ」の講座「東京の野鳥の今」で川内研究部長が報告する。午後1時半から。同カレッジの定員30人。受講料1500円。申し込み(電)03・5532・1306。