万円高くなる」と設計士から言われ、薦められた安価な製品を選んだ。 一方、耐震性や断熱性にはこだわった。ほぼ全ての窓を断熱性の高い仕様にし、床の一部は重い家財に耐えられるよう補強することにした結果、400万円の上乗せとなった。 今後は内装や外装、キッチンの設備を決める予定だが、2人は「基本的に標準仕様を選んで追加料金を払わないようにする」と決め、土地と建物を合わせた予算は5000万円前後に収める計画だ。
ローン審査中に金利上乗せ
不動産価格は上昇傾向が続く
住宅購入者の資金繰りを支えてきたのが、長年続く低金利環境だ。三井住友トラスト・資産のミライ研究所によると、1993年以前にローンを組んだ人のうち、変動金利を選んだ人の割合は18・2%だった。当時は金利が大きく変動しており、金利上昇リスクの高い変動型を選ぶ人は少なく、固定型が主流だった。 ところが、00年代以降は日銀の低金利政策が長期化し、銀行は変動型の金利を固定型より大幅に低く設定。不動産流通経営協会の23年度の調査では、変動型を選ぶ人が82・8%に上った。 川崎市の男性もローンは変動型にした。だが、恐れていたことが起きた。 今夏、金利が最低水準のインターネット銀行で、借入額4900万円、返済期間35年のローンを申し込んだところ、審査中に適用金利が当初の想定より0・15%上がると知らされた。 お金を借りやすくする異次元緩和から一転、引き締め策を視野に入れ始めた日銀が7月末に政策金利を0~0・1%程度から0・25%程度に引き上げたため、各行がそれに合わせて変動型の住宅ローン金利を上げ始めたのだ。大手行にとっては17年ぶりの引き上げ。男性は「返済額が膨らむだけに気がかりだ」と不安をこぼす。借入額を抑えるため、ローンは男性だけで組み、金利上昇が続くようなら繰り上げ返済も視野に入れる。
「現役世代のための政策を」
金利負担が増しても、賃金が十分上がっていくなら問題はない。男性の給与は今春、約5%増え「今後も賃上げの波は続きそうだ」と考えている。ただ、現状は身の回りの物価高の影響が大きく、負担感は拭えない。共働きで自炊が難しく、食費は切り詰めにくい。「節約ばかりで今の生活水準をあまり落としたくない」のが本音だ。 政治には、現役世代に目を向けてほしいと望む。「高齢者向けの政策や低所得者への手厚い補助ばかりが目立つ。自分たちに響く政策がない」と男性は話す。社会保険料アップや防衛増税方針など負担ばかりがのしかかり、それに見合った恩恵を感じることはない。
している。「子供のためにも資産を築きたい」と考え、35~40年ローンで1億円を超える新築マンションの購入を検討する。展示施設で働く渡辺健太郎さん(44)は「掛け捨ての家賃を払うのではなく、購入して資産形成を目指す若者が増えてきた」と話す。
金利2%上昇で月々の負担「4万円増」
ニッセイ基礎研究所の福本勇樹上席研究員=東京都内で2024年10月9日、竹地広憲撮影
日本の持ち家世帯率は長年6割前後を維持してきた。しかし、ニッセイ基礎研究所の福本勇樹上席研究員は「住宅価格の上昇に賃金上昇が追い付いておらず、いよいよ限界が来ている」と指摘する。働き方改革に基づく時間外労働の規制が強化される「2024年問題」を受け、大手住宅メーカー担当者は「人手不足で工期が長くなり、工事費が高くなっている」と話し、価格の上昇圧力は当面続く可能性がある。 また、金利上昇が続けば家計を圧迫する可能性もある。福本さんの試算によると、6200万円の住宅ローンを期間35年(変動型)で借りた場合、金利が0・4%だと毎月の返済額は15万8218円。10年後に金利が1%上昇すると、17万8506円、2%だと20万338円になり、およそ2万~4万円の負担増となる。
の成長に応じ支出がかさむ。暮らし向きの改善には持続的な賃上げが欠かせない。 日銀が利上げ局面に突入し、日本経済には「金利のある世界」が到来し始めている。金利上昇は、お金を借りる側の負担増大を意味する。数千万円単位で住宅ローンを組む人も多く、金利が少し引き上げられるだけで、月々の返済額は増加する。 政府は「貯蓄から投資へ」をスローガンに少額投資非課税制度(NISA)などの活用を促し、金融資産を増やそうとしている。ただ、多くの若年層は投資の原資となるお金を多くは持たない。実際、取材では「住宅の購入資金に充てるため、NISAにお金を回すのはやめた」という20代女性もいた。富裕層とそれ以外で格差が広がりかねず、政策的な目配りが必要だと感じた。 賃上げを伴いながら緩やかに物価が上昇する好循環の実現が近づく中で、日本経済は重要な局面を迎えている。どの政党に国のかじ取りを委ねるか。有権者は各党が描く将来像をしっかりと見定める必要がある。
※この記事は、毎日新聞と Yahoo!ニュースによる共同連携企画です。