総務省の「全国消費実態調査」によると、東京都で世帯年収800万~900万円の層は上位30%に入っており、本来なら恵まれた境遇にあるはず。しかし、リアルな世間の声を集めてみると、「世帯年収800万円でも家計は火の車」だというサラリーマンが急増しているというのだ。
「ウチは普通よりも上」という慢心が、破たんへといざなうのか? 世帯年収800万円の家庭では、“予想外の出来事”や“大きな買い物”ですぐにひっ迫してしまうのだ。ここで、ひとつ実例を紹介しよう。
「子供が産まれただけでこんなにも家計が傾くとは思いませんでしたよ」と漏らすのは、杉並区在住の加藤慶介さん(30歳・仮名)だ。システム系ベンチャー企業のSEとして働く彼の年収は約500万円。一方、アパレル企業で働く妻は約300万円。京王線沿線にある賃貸マンションで新婚生活を送っていたが、妻の妊娠・出産を機に生活が一変してしまったという。
「妻が休職して収入が一時的に減るのは想定内だったのですが、痛かったのは出産後、復職した妻が正社員ではなく、契約社員になってしまったこと。100万円近く収入が下がってしまいました」
さらに、都心部特有の“保育園問題”が夫妻にのしかかる。
「杉並区は保育園の激戦区で、ゼロ歳時からどこかに預けた実績がないと、安い認可保育園にはなかなか入れないんです。だから僕らは妻が予定よりも早く復職して、ベビーシッターを雇うことにした。けれど、シッター代を調べたらあまりの高さに驚きましたね。専門業者に頼むと月に25万円ですよ。そんな額、払えるわけない」
そこで、加藤さん夫妻はマッチングサイトを使って自力でシッターを探すことに。時給交渉が可能な個人営業者を探し、「10人以上と面談をした」という。
「少し前にベビーシッターが子供を虐待死させた事件もあったので心配でしたが、なんとかいい人を見つけました。それでも月に15万円。家賃と合わせて毎月の固定費が28万円ですから、ベビー用品代とかもあるし、キツイです」
それでも残業を増やしてわずかな手当を費用に充てていた加藤さんに、さらなるトラブルが……。
「実は、雇用状況で上司と揉めた妻が、僕に言わず勝手に辞表を出してしまったんです。産後のストレスもあったようであまり問い詰めませんでしたが、正直、『なんてことをしてくれたんだ』と……」
なんとか転職はできそうとのことだが「子供が成長して私立に行ったら、間違いなく我が家は破たんする」と、将来に怯える日々だ。
3/31発売の週刊SPA!に掲載されている特集『都心部[年収800万円]家族は火の車だった』では、上記のような実例を多数紹介。出産、養育費、住宅ローン、転職失敗、介護、散財癖……etc.でいとも簡単に崩れ去る「世帯年収800万円」の内情をリポートしている。果たして、都心部で不自由なく暮らすにはいくら必要なのか? また、地方で家計が圧迫される世帯年収とは? 普通に暮らしているとなかなか聞くことはできない「隣の人のリアルな家計」を大公開している。 <取材・文・撮影/週刊SPA!編集部>