酒の飲み方で祖先が「縄文系」か「弥生系」かわかる 根幹にある酵素の違い

★肝臓を守って年末年始に克つ

前回この欄で、摂取したアルコールを分解できる臓器は肝臓だけ-と書きました。今回はその工程と根幹にある「体質の差」について解説しましょう。

お酒として飲んだアルコールは、約30%が胃で、残りはすべて小腸で吸収されます。いや、実際には「すべて」ではなく、2%ほどは呼気と尿として排出されます。つまり、警察の飲酒検問が拠り所としている「呼気のアルコール量」は、実際に飲んだアルコール量の2%未満のわずかな量であり、それで検出されるということは、もはや言い逃れできない-ということを意味しているのです。

一方、胃と小腸で吸収されたアルコールは、アルコール脱水素酵素(ADH)によって「アセトアルデヒド」という毒性のある化合物に変化します。これが二日酔いの原因物質です。

すると今度は、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)がこれを分解して酢酸に変え、最終的には水と二酸化炭素になります。

よく「酒飲みは蚊に刺される」と言われます。アルコールが分解されてできた二酸化炭素は皮膚を通して排出され、蚊はその臭いで人間がいることを認識して寄ってくるのです。蚊のいる部屋に酔っ払いを一人寝かせておけば、蚊取り線香はいりません。

アルコールをアセトアルデヒドに分解するADHは、人間なら全員等しく持っています。しかし、アセトアルデヒドを酢酸にして無毒化するALDHは、人によって持っていたり、働き(活性)が悪かったりします。そして、この違いが、酒を飲める、飲めない、酒に弱い-という「体質の差」を分けているのです。

体質は遺伝子によって決まります。両親が揃って酒飲みなら、子供は間違いなく「飲める体質」ですが、さらにさかのぼると、祖先が弥生系か縄文系か-の違いに、遺伝の経路が見えてきます。

日本人の祖先は、ヨーロッパからヒマラヤ山脈を超え、沖縄側から北上してきた縄文系と、中国大陸を経て南下してきた弥生系に分けられます。そして遺伝子的に見ると、縄文系の多くはALDHを持っていて酒が飲める、弥生系はALDHを持っている人が少ないので酒が飲めない(または弱い)-という特徴があるのです。

縄文系と弥生系の違いは、顔つきでも見当がつきますが、酒の飲み方のほうがより鮮明にその差がわかります。あなたはどちらですか。 (湘南東部総合病院・市田隆文院長/構成=長田昭二)

 

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