酔っ払うと、まるで別人のようになってしまう人もいるかもしれない。だが、ミズーリ大学が行った研究によれば、人の性格はお酒を飲んでもほとんど変わらない。変わるのは「外向性」のみだという。
わたしたちは酔っ払うと“別人”になる、というのは本当なのだろうか? 学術誌『Clinical Psychological Science』で発表された新しい研究は、人の性格が、素面のときと酔っ払っているときとで、一般的に考えられているほど大きく変わらないことを示している。
「ビッグファイブ」と呼ばれるモデルによると、個人の性格は5つの因子によって記述される。「外向性/内向性」「神経症傾向/感情の安定性」「誠実性」「友好性/敵対性」「開放性/精神の閉鎖」だ。こうした因子は、内側・外側からの影響や個人の心理状態によって変化する可能性がある。
では、アルコールによってそれぞれの因子はどれくらい変化するのだろうか? アルコールの影響下にあるとき、人は自分の性格が著しく変化すると考えがちだ。だがミズーリ大学のレイチェル・ウィノグラードのチームが行なった研究によると、実際には、他人は酔っ払った人のことを多かれ少なかれ「素面のときと同じ」だと見ていることが明らかになった。
「研究の参加者たちは、お酒を飲んだ際には5つの性格の因子すべてにおいて違いがあると感じたと報告しました」。ウィノグラードは説明する。「しかし、素面のときと酔っているときで、本当に違っていた因子は外向性のみでした」
より社交的、より肯定的、より対話的
研究者たちは、テストを行うために156人の参加者を集めた。まず最初に、彼らに自分の飲酒習慣を評価して、素面のときの性格と酔っ払っているときの性格についての自己認識をアンケートにて答えてもらった。また事前にアルコールテストが行われ、体重と身長が記録された。その後、3〜4人のグループごとに研究が行われた。
15分の間に、グループのメンバーはそれぞれ飲み物を飲まされた。何人かはただのソーダを飲んだのに対し、何人かは血中アルコール濃度が0.09パーセントになるようにつくられたソーダとウォッカのカクテルを飲んだ。それから15分後、参加者はゲームをするように求められた。特定の行動や性格の特徴を観察するために研究者たちが課したアクティヴィティである。それぞれの活動ごとに、参加者と研究者は別々に点数をつけた。
予想通り、被験者たちの自己評価は、彼らが性格の5つの因子すべてにおいて変化を感じたとの結果になった。たとえば、素面のときと比べて誠実性のレヴェルはより低く、外向性や感情の安定性はより高いレヴェルになった。これに対して、外部の観察者たちは、外向性においてのみ有意な違いを記録した。アルコールを摂取した被験者たちは、より社交的で、肯定的で、対話的だったと。
研究者たちは、この研究結果が臨床の場でも利用できると考えている。アルコールのネガティヴなインパクトを減らすことを目指した治療法を開発するための出発点となるかもしれない。