重厚蔵造り、街に再び 全壊の永田醸造の修復完了

 東日本大震災で甚大な被害を受けた国の登録有形文化財「永田醸造店舗」(宮城県亘理町)の修復工事が3月末に完成し、往時をしのばせる重厚なたたずまいが再び、街並みを彩っている。
 永田醸造は亘理伊達家の御用商人として江戸初期からみそ、しょうゆの製造などを営む老舗。2階建ての蔵造りの店舗は、明治20年代に建設された。
 随所に白漆喰(しっくい)や海鼠(なまこ)壁などが配置され、屋根の上に付けられた箱棟には永田家の家紋であるキキョウをかたどった風穴が掲げてあった。
 震災では、太い梁(はり)で守られた店舗の枠組みこそ無事だったものの、箱棟や屋根は全て落下し、壁も剥がれ落ちて全壊と判定された。
 10代目の永田幸洋社長(73)は「店舗は地域の財産。私の責任で元に戻す」と決意した。すぐに「億単位」という修復費用の調達に駆け回り、昨年7月に着工。特に修復が困難とみられていた箱棟は京都、奈良で活動する宮大工8人に依頼し、匠(たくみ)の技で復元させた。
 「よくここまで戻った。きれいになった姿を多くの人に見てほしい」と永田社長。先祖から受け継いだ財産を守り抜いた感慨に浸った。

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