重大リスク企業58社!ケンウッド、石垣食品、明治機械…

 3月決算の上場企業のうち、2010年3月期決算で、経営上重大なリスクを抱えているとして「継続企業の前提」に注記が付いた企業が58社に上ったことが26日、東京商工リサーチの集計で分かった。前期決算で業績を急回復させる企業が目立つなか、大甘のリスク開示基準を当てはめてもなお注記が付いた企業はかなり深刻といえる。
 会計ルールにより、上場企業の経営者は、自分の会社が経営を継続していくうえで重大なリスクを抱えていると判断したら、リスクの中身と対応策を決算書などに明記しなくてはいけない。
 さらに経営をチェックする監査人も、担当企業に重大なリスクが存在すると判断した場合、監査報告書に注意を促すための「注記」を記載する。投資家にとって注記は、監査人が認めた「イエローカード企業」という意味合いがある。
 商工リサーチの集計によると、10年3月期に注記が付いた上場企業は58社。証券取引所別では、東証21社、大証9社、名証8社、札証1社、ジャスダック19社となっている。
 うち52社は09年10~12月期から引き続き注記が付いた“継続組”。10年3月期に新たに注記が付いた“新規組”は、電機大手のJVC・ケンウッド・ホールディングス、半導体メーカーの日本インター、製粉・飼料製造設備の明治機械、不動産のメッツ、金属製品のMIEコーポレーション、インターネット広告のSEメディアパートナーズの6社だ。
 商工リサーチは「09年9月中間期に注記が付いた企業は約70社で、やや減っているものの、好決算企業が相次ぐなかでもこれだけの数に上った。そのほとんどが営業キャッシュフロー(営業活動で発生する現金の流れ)がマイナスで、経営環境が依然厳しいことを物語っている」(情報部)と話している。
 有名どころでは、JVC・ケンウッドが10年3月期に2期連続の当期純損失を計上。同社は決算短信で「ビクターの借入契約の一部およびケンウッドの借入契約の一部が財務制限条項に抵触し、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在している」と説明している。
 ここでいう財務制限条項とは、融資を継続するための条件のこと。業績や財務内容などが財務制限条項で定めた一定条件を下回った場合、融資を即座に返済しなくてはいけなくなる。
 有名どころではこのほか、ミネラル麦茶で知られる石垣食品などにも注記が付いた。
 新規組では、日本インターが売上高の急減で債務超過に陥ったことから注記が付いた。同社は4月、私的整理の一種「事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)」を申請している。
 明治機械は大幅な当期純損失を計上、メッツは資金繰り難に直面、MIEコーポレーションとSEメディアパートナーズはともに2期連続の営業損失計上などを理由に注記が付いた。
 好決算が相次ぐなか、金融庁が09年3月期から特例措置としてリスクの開示基準を緩和してもなお注記が付く企業は、かなりリスキーな企業といえる。
 商工リサーチは「今回は注記が付かなくても、その予備軍のような企業は多くある。投資家は、有価証券報告書などで営業キャッシュフローがマイナスになっていないかしっかりとチェックした方がいい」と注意を促している。

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