国内外で金(ゴールド)の取引価格が最高値を更新する中、東北でも金への関心が高まっている。インフレに強い安全資産として、貴金属店で購入者が急増する一方、売り時とみて宝飾品を古物商に持ち込む動きも活発だ。長期化する円安ドル高で円建ての国内価格の上昇が加速し、金の値動きを捉えた運用商品にも人気が集まる。(経済部・菊間深哉)
仙台市青葉区の貴金属店「田中貴金属ジュエリー GINZA TANAKA 仙台店」では、金の取引を希望する顧客に整理券を配り、順番待ちをお願いする状況が続いている。
金の国内小売価格が初めて1グラム1万円(税込み)を超えた昨年8月ごろから客足が伸び始め、1万3000円を超えた今月16日前後からは輪をかけて増えた。
田中貴金属ジュエリーの全国6店舗合計の販売量は3月、前月比1・9倍(重量ベース)と急増した。買い取り量(1・1倍)よりも増加のペースが速いのが、昨今の特徴という。
仙台店の北垣匡士店長は「インフレで紙幣に対する信用が薄まる中、実物資産として金をある程度保有しておきたいというのが顧客の意向のようだ」とみる。
中東情勢や米中対立への警戒感、米国の金利低下の見通しといった思惑から、世界的指標のニューヨーク金先物相場などでも歴史的な高値が続く。
国内の指標となる田中貴金属工業(東京)の金の小売価格はグラフの通り。円安ドル高が進行する中で、円建ての金は4月に入って連日、最高値を更新する。仙台市内で古物商「大黒屋」を3店舗展開する仙台買取館(太白区)は2月、全体の買い取り額8000万円のうち、宝飾品など金関連が1500万円を占めた。富裕層が金の延べ棒を持ち込むといった大型の買い取りではなく、少額の宝飾品を数多く引き取った結果という。
桜井鉄矢社長は「2月はずいぶんと金の持ち込みが多かった。金相場が崩れないかが心配で、買った金はすぐに現金化している。これ以上、高騰したら世の中から金歯がなくなってしまうのではないか」と語る。
七十七証券(青葉区)では、取り扱う投資信託商品「三菱UFJ純金ファンド」の基準価格が、今月15日に過去最高値となる3万1883円に達し、年明けから38・0%上昇した。国内の金取引の値動きと連動しており、投資熱の高まりが反映される。
真野紀元営業企画部長は「顧客のポートフォリオ(運用資産構成)を構築する中の、選択肢の一つとして金を投資対象とする運用商品を案内している。株式やその他の資産と異なる金特有の値動きの特性をよく理解した上で、判断してもらいたい」と話す。