金利上昇を予想する、住宅ローン利用者が急増 超低金利も「そろそろ終わり」と思う人が増えてきた?

4月以降、日本銀行は巨額の国債買い入れで市場金利の押し下げを図っているが、住宅ローン利用者はそれとは逆の見方を強めている。
住宅金融支援機構(機構)が8月30日に公表した「民間住宅ローン利用者の実態調査」(調査時期は2013年3月~6月)によると、住宅ローン利用者のうち、今後1年間の住宅ローン金利について、「現状よりも上昇する」と答えた割合は45.1%と、前回調査(12年11月~13年2月)の35%から大幅に上昇。前々回調査(12年7月~10月)の20.8%と比べるとその割合は倍以上だ。また、「ほとんど変わらない」と答えた割合は、前回の53.3%から40.4%に低下した。
■金利上昇を予想する住宅ローン利用者の割合が増加
住宅ローン金利が「現状よりも上昇する」と答えた割合が4割台に達したのは、この質問を調査項目に含めた11年3月~6月の調査以来、初めてになる。そして、今回の調査期間中(13年3月~6月)に起きた金利に影響を及ぼす大イベントが、日銀が打ち出した「次元の違う金融緩和」(黒田総裁)にほかならない。
従来とはケタ違い国債買い入れを行う金融緩和だったため、国債市場は混乱し、長期金利は乱高下した。日銀の狙いとは裏腹に4月、5月は市場金利が上昇し、一部の銀行では住宅ローン金利の引き上げに動いた。こうしたことも影響したとみられ、住宅ローン利用者の金利先高感が強まり、利用タイプの動向にも明確な変化が出た。直近、変動型金利の利用割合が全体の5割を超していたが、今回の調査では43.5%に低下。これは08年11月~09年2月調査の35.8%以来の低さだ。
ただし、同調査によると、住宅ローンを選んだ決め手は「金利が低いこと」という理由が全体の66%と依然として圧倒的に高い。一方、「将来、金利が上昇する可能性があるので、将来の返済額をあらかじめ確定しておきたかった」という割合が全体の16.5%(前回調査は13.5%)に上昇し、固定金利型の利用割合も増えている。足元では景気回復基調が強まっていることから、将来の金利上昇を予想し、ローンの利息負担増加を警戒する人が増えているわけだ。
■もうはまだなり、まだはもうなり
一方、機構が公表した別の実態調査を見ると、変動型金利の利用割合(単月ベース)は4月まで40%半ばから後半だったものが、市場金利が上昇した5月には32%に低下。これは08年11月調査の31%以来の低さだ。ところが、債券市場が落ち着いて、再び市場金利がジワジワと下がり始めた6月には、変動型の利用割合が44%に上昇している。同調査は調査対象が200人台と少ないものの、変動型金利には依然として根強い人気があることが伺える。
株式相場の格言には、『もうはまだなり、まだはもうなり』というものがある。その意味するところは、「もう底だと思えるようなときは、まだ下値があるのではないかと一応考えてみなさい。反対に、まだ下がるのではないかと思うときは、もうこのへんが底かもしれないと反省してみてはどうか」(日本証券業協会ホームページから引用)というもの。
これを金利に置き換えてみると、今回の実態調査では「まだ住宅ローン金利は下がると思っていたが、さすがにもう底ではないか」と思い始めた人が増え、固定金利型の住宅ローンを利用して金利上昇リスクをヘッジしたといえる。足元では日銀の膨大な国債買い入れによる金融緩和が効いており、市場金利は低く抑えられ、6月以降はじりじりと低下している。そうした中でも、固定金利タイプの利用割合が増えていくようだと、住宅ローン利用者の金利見通しは確実に変わってきているといえそうだ。

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