金券、紙切れの危機 文具券、ギフト券…続々打ち切り

 文具券や音楽ギフトカードなど長年、消費者に親しまれてきた業界単位のギフト券が次々と発行を停止し、一部の利用ができなくなった。折からの不況や少子化で利用者が減ったのが主な理由。今年4月の法改正も利用終了に拍車をかけたが、払戻期間などを含め、周知不足の感は否めない。金券が紙切れになってしまう恐れもあり、加盟店からは不満の声が上がる。
 新入学のお祝いや、地域の子ども会の景品などに広く利用されてきた全国共通文具券(額面500円)。発行元の日本文具振興(東京)によると、1978年の発行以来、全国の加盟文具店で使える利便性が受け、ピークの90年代半ばには年間18億円分を発券したが、近年は3分の1程度に落ち込んでいた。
 山本雅彦専務は「不況や少子化で文具の売り上げが伸び悩む中、インターネットの普及で流通形態も変わった。文具業界の振興という役割を終えたと判断した」と悔しさをにじませる。10月に年内いっぱいでの利用終了を決定。来年2月まで払い戻しに応じる予定だが、現時点で42億円分が未使用という。
 約4500の加盟店でCDやDVD、楽器などが買える「音楽ギフトカード」(額面500円・1千円)も今年3月、発行を停止し、8月に利用を終了した。当初、払戻期限は10月末だったが、加盟店からの要望なども受け、11月末に延長した。
 東京都レコード商組合が71年に発行を始めた「レコード券」が前身。88年に今の名称になったが、音楽ソフト業界を取り巻く環境の変化で利用が減り、事業継続が困難に。レコード会社や販売会社が出資する発行元「ジャパン・ミュージック・ギフトカード」(解散)の担当者は「音楽ソフトの需要拡大という使命を終えた」と説明する。
 このほか、生花店などで使える「花とみどりのギフト券」(額面500円・1千円)は、有効期限の設定がない券の取り扱いが10月末に終了。見舞いなどで利用される「ヘルスギフト券」も有効期限のない券に限って取り扱いを終えた。プリペイドカード化された図書カードなどとは対照的に、紙の券は使い勝手の悪さなどから利用低迷が続く。
 打ち切りの背景には法改正もある。商品券やギフト券、プリペイドカードを含む「前払い式支払い手段」の発行者の義務などを規定した前払式証票規制法(プリカ法)を改正する形で今年4月、「資金決済法」が施行された。旧法では払い戻しの規定がなかったが、新法で手続きなどが条文化。払戻期間などを新聞で公告したり、加盟店に掲示したりすることが発行者に義務づけられ、これによって事業終了が容易になった。
 大阪市北区の老舗(しにせ)文具店には10月下旬、日本文具振興から利用終了を知らせるポスターが突然、送られてきた。店主は「有効期限まで最大で3年も残っている券もあり、利用できなくなることを知らない保有者も多いのではないか。テレビCMなどでも告知してほしい」と不満を募らせる。(宮崎園子)
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 国民生活センターはギフト券の利用終了などに関する情報をホームページ(http://www.kokusen.go.jp/recall/recall.html)で紹介している。

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