金相場:最高値更新も「10年以来の安値突入可能性」

 安全資産とされる金の価格が低迷している。米景気の回復期待から投資資金が株などのリスク資産に流れていることに加え、「世界的な金余りを招いた米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和策が縮小し、投資家が金を売却する」との観測が広がっているためだ。金は昨年末より26%も値下がりし、今後も下落圧力が続くとの見方が出ている。
 ニューヨーク商品取引所の金先物相場は16日、取引の中心となる2月物が1オンス=1244.4ドルで取引を終えた。割安感から買いが入って前週末終値比では9.8ドル値上がりしたものの、2012年末の1675.8ドルから430ドル超値下がりした。
 金相場には、金融危機や戦時など非常時に「価値が目減りしにくい」として投資資金が流入するため、「有事の金」と言われる。世界的な金融・経済危機に発展した08年秋のリーマン・ショック後、金価格は上昇傾向が続き、11年9月には欧州債務危機の深刻化を背景に1オンス=1923.7ドルの史上最高値をつけた。
 ただ、今年に入って以降、米景気の回復期待を背景に投資マネーが安全資産の金から株式などへ移る動きが強まり、金相場の下落と株高が進んだ。FRBのバーナンキ議長が今年5月、量的緩和策の縮小を示唆すると「緩和マネーが金相場から流出する」との観測が拡大。6月27日には終値で1オンス=1211.6ドルに下落し、10年8月以来約3年弱ぶりの安値を記録した。
 その後は「富裕層の増加でアクセサリー、地金の需要が増した中国などアジアの投資家が買いに入った」(田中貴金属の原田和佳子・貴金属市場部長)ことなどで値を戻し、8月には1400ドル台を回復。1300~1400ドル前後でもみ合う展開が続いた。
 11月以降、金相場の下落傾向が改めて鮮明になったのは、米国で雇用改善が進み、再び景気回復期待が強まったためだ。米株価の指標、ダウ工業株30種平均は11月21日、終値で初めて1万6000ドルを突破。日経平均株価も12月3日の終値が1万5749円66銭に上昇し、今年の最高値を更新する一方、金相場は同日、1オンス=1220.8ドルに落ち込んだ。
 豊島逸夫・経済アナリストは「米景気の改善が確認されてFRBの利上げ観測が強まれば、金相場は今年の最安値を割り込み、10年以来の安値圏に突入する可能性が高い」と指摘。一方で金の平均生産コストは1オンス=1100~1200ドル程度とされ、価格がこれを割り込むと供給が絞られるため、下値の目安になる。14年の相場について、豊島氏は「米国の動向をにらみながら、1100~1400ドルで推移する」と予測している。【山口知】

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