JR東日本は、利用者の少ないローカル線の区間別収支を近く公表する。区間別収支の情報開示は初めて。人口減少や新型コロナウイルスの流行で利用者の落ち込みに歯止めがかからない中、収支のデータを基に地方自治体と協議し、鉄路に限らない地方交通の在り方を探る考えだ。
公表の対象は管内の地方交通線33路線のうち、一定の基準に該当する区間とみられる。
1日1キロ当たりの利用者を示す平均通過人員(輸送密度)2000人未満を収支公表の基準と仮定すると、東北関係の路線は2019年度時点で、陸羽東線や釜石線、陸羽西線など19路線が当てはまる。14年に廃止された岩泉線は除外した。
国土交通省の有識者検討会が25日にも示す提言案に基づき、バス転換など運行見直しの協議入りの目安となる輸送密度1000人未満が基準に設定される可能性もある。東北関係では1000人を上回る男鹿線と石巻線の2路線が基準から外れる。
公表の基準を巡り、深沢祐二社長は5日の定例記者会見で、輸送密度2000人未満を採用する可能性に触れた。4月にはJR西日本がこれに沿って収支を明らかにしている。
[平均通過人員(輸送密度)]1キロ当たりの1日平均乗客数。乗客全員が起点から終点まで乗車したと仮定して、1キロ当たりの平均人数を算出する。輸送人員だけでは分からない路線全体や区間ごとの利用実態を示す指標として使われる。旧国鉄改革時は、輸送密度が4000人未満で、ピーク時1時間の乗客数などが一定条件に当てはまらない線区は「特定地方交通線」として、バス転換や第三セクター化が進んだ。