鉄道と震災 経験伝える JR東日本や被災各社が復興誌

東北運輸局とJR東日本、東北の民間鉄道などは東日本大震災の復興誌「よみがえれ!みちのくの鉄道」を発行した。地震発生から津波到達までの避難誘導の記録、被災状況と早期復旧の取り組み、今後の教訓を網羅した。各社の貴重な経験を後世に伝え、全国で進む災害対応マニュアルの見直しに役立ててもらう。
 復興誌はA4判、231ページでオールカラー。東北新幹線やJR在来線、三陸鉄道(岩手県宮古市)、仙台空港鉄道(宮城県名取市)、IGRいわて銀河鉄道(盛岡市)など12社の被災状況、復旧への対応を記録した。
 東北新幹線は震災当時、新白河-七戸十和田間を走行中だった上下14本に関し、緊急停止から乗客救出までの経過を詳細に記述した。在来線は計24路線の被災状況のほか、復旧工事や代行バス運行の様子も盛り込んだ。
 停電で本社の暖房が使えなくなった三陸鉄道が災害対策本部を気動車内に設置したことや、IGRが三陸鉄道の社員を雇用して経営再建を助けたエピソードも載せた。
 地震発生時に偶然、JR常磐線に乗り合わせ、乗務員と協力して乗客の避難誘導に当たった相馬署警察官の生々しい体験談もあり、「震災の鉄道復旧の記録では恐らく一番詳しい内容」(東北運輸局)に仕上がった。
 復興誌は昨年8月、東北運輸局とJR、被災鉄道各社が編集委員会を発足させ、内容を検討してきた。「教訓を引き継ぐことが目的」と確認し、非売品と決めた。
 製本した1000部は東北の自治体や全国の鉄道協会などに配布する。近く東北運輸局のホームページに全文を掲載する。被災鉄道の復旧は道半ばのため、「続編」も発行する方向だ。
 編集委員長を務めた東北運輸局の岸谷克己鉄道部長は「関係者の記憶が鮮明なうちに記録を残したかった。復旧の軌跡は今後の鉄道防災に極めて大事なノウハウ。次に生かしたい」と話す。

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