半世紀以上も続くなどのロングセラーを誇る大衆薬や日用品が今年、相次いで節目の年を迎えている。時代の流れとともに変化する消費者のニーズに柔軟に対応してきたことが“長寿”の秘訣(ひけつ)で、現在も高い人気を維持している。一方で変化にうまく対応できず、厳しい状況に追い込まれている商品もあり、長寿の難しさも出ている。
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大正製薬の栄養ドリンク剤「リポビタンD」は、今年で発売から50年を迎えた。日本の高度経済成長とともに親しまれてドリンク剤文化を築き、累計販売は340億本以上にのぼる。
勝ち残り続けた一つの要因は、「多様化するニーズに対応」(大正製薬ホールディングス)し、競合品が出ると目的別の商品を出して戦ってきたことだ。例えば、子供用や寝る前の需要に応えたカフェインレスなどもシリーズ化して23種類を展開。そのブランド力を生かし、栄養ドリンク剤市場で約4割(店頭小売価格ベース)のシェアを持つ強みを発揮する。
同じく50年を迎えたロート製薬の胃腸薬「パンシロン」は、累計出荷数がシリーズ全体で5億個に上る。内服液やかみ砕いて服用するチュアブルタイプを出すなど、飲みやすさを追求して工夫を重ね、今も消費者からの支持を集めている。
発売25周年を迎えたのが、花王の洗濯用洗剤「アタック」。1回当たりの使用量が少なく、スプーンで計量する粉末洗剤の先駆けだ。液体も商品化しており、洗剤市場全体ではトップブランドとなっている。来年4月には粉末洗剤として業界初の詰め替えパックを発売する予定で、粉末でも環境への配慮を打ち出して購買意欲を誘う。
これら長寿商品が長生きする背景には、ブランド力が構築されれば「新商品をゼロからPRするよりも、会社の“顔”となった既存ブランドで売り出す方が消費者に受け入れられやすい」(第一生命経済研究所の宮木由貴子主任研究員)という企業の思惑もあるようだ。
ただ、ブランド力があっても変化にうまく対応できなければ勝ち残るのは難しい。1975年に発売された小林製薬のトイレ用芳香消臭剤「サワデー」は40年近いが、ピーク時の1997年度の売上高約74億円が、昨年度は約20億円と3分の1以下に落ち込んだ。脱臭機能が付いた便器の普及などが要因だ。同社では「どんな消臭芳香剤が求められているのか模索している段階」としており、リニューアルなどで挽回したい考え。
長引く景気の低迷で消費者の選別眼がますます厳しくなる中、“長生き”し続けるのも容易ではない。(豊田真由美)