長引く接触制限、企業に試練 感染予防へ大きなコスト 経済界、事業再開へ指針

 政府が新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の一部解除を決めたことを受け、経済活動が再開へ動きだす。だが、解除後も消費者は「3密」を避け、人との接触を減らす行動を求められる。感染予防策を講じながらの事業活動は企業にとって大きなコスト増加要因。新型コロナとの闘いは長期化が避けられず、日本経済に大きな試練が待ち構える。

 「事業者は、職場での取り組みが、社会全体の感染拡大防止につながることを認識して対策を講じる」。経団連が14日発表した感染予防ガイドライン(指針)は、経営トップに治療法確立やワクチン普及までの長期戦の覚悟を求めた。

 都市部に人口が集中する日本では公共交通機関での感染リスク低減が課題となるため、経団連は指針で週休3日制の導入検討を提案。既に東芝は製造現場に導入する方針だ。富士通の時田隆仁社長も「採用できるものは積極的に採り入れたい」と話す。コロナ対策を契機に、日本人の働き方は大きく変化する可能性がある。

 経済活動が再開すれば、人の移動の増加は避けられない。鉄道会社からは「混雑状況の見える化で、利用客が最適な時間帯や経路を選べるようにしなければいけない」(東京メトロの山村明義社長)といった声も出る。

 小売りや外食産業の指針では、利用客にも協力を求める。全国スーパーマーケット協会など小売業界12団体の指針は、来店客にあらかじめ買い物の計画を立てて店内での滞在時間を減らすよう促す。外食産業は、客同士が横並びとなる座席配置とし、お酌の遠慮なども呼び掛ける考えだ。

 従業員の働く意欲の維持も欠かせない。小売業界の指針では「顧客対応に伴う従業員の精神的負荷」への目配りを要請。全国銀行協会は「顧客の生活維持と事業継続に必要不可欠なサービスを継続する」と強調した。

 感染予防策を講じながらの事業再開は、日本社会全体に長期の負担を強いる。ただ、経団連の担当者は「感染爆発が起きれば、莫大(ばくだい)な損失が発生する」と対策の必要性を説く。

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