長谷工「盗撮所長」が新築マンションに仕込んだ「卑劣な手口」

共用トイレに盗撮カメラ設置が発覚しても、事件は隠蔽されて……長谷工はゼネコンの中では準大手という位置づけだが、分譲マンション建設に関しては業界トップシェアを誇る

 「長谷工関連会社の30代女性作業員が、共用トイレを使った時のことです。建築中の建物は、汚さないためトイレの壁にプラスチックのベニヤ板がテープで張ってある。そのテープに、ドリルで開けたような穴が等間隔に並んでいたことに目がとまったそうです。おかしいと思ってテープを剥がすと、縦横2㎝ほどの小型隠しカメラが出てきたんです」

 こう話すのは、神奈川県川崎市内に建設されたマンション『アクアブリーズ川崎』の現場作業員・A氏だ。

『アクアブリーズ川崎』(神奈川県川崎市)は、279戸を擁する新築マンションである。昨年12月24日に、建設途中だったこのマンションの共用トイレから盗撮カメラが発見された。仕込んでいたのは、分譲マンション建設最大手・長谷工コーポレーションの所長だったのだ。

「盗撮カメラにはスイッチが入っており、撮影中だった。女性作業員は所長に『隠しカメラがあるから見てほしい』と訴えたそうです。所長はトイレに来ると、カメラを引っ張り出して『これはオレが処分する』と持って行った。女性作業員はSDカードだけ預かり、パソコンで見ると、自分の用を足している姿が盗撮されていたそうです。さらに他にも、長谷工の女性社員が3人隠し撮りされていた」(前出・A氏)

 翌日、女性作業員は盗撮カメラに映っていた女性社員とともに、所長の事務所に向かった。A氏は続ける。

「所長に保管していた盗撮カメラを返してほしいと要求すると、『捨てた』と言い張ったそうです。どこに捨てたのか問い詰めて、放棄したという場所を作業員総出で探したけど見つからない。彼の事務所のデスク周りを探したら、鞄の中からカメラが出てきた。所長は『誰かがオレをダマしたんだ』と言い訳していましたが、緊張していたのかすごい汗でした」

 作業員たちが警察を呼ぶように促すと、所長は何も言わずに従ったという。

「警察官に来てもらったんですが、所長は自分のパソコンの前から動かない。怪しいので、席から離れた隙にパソコンを開けてみると、『お気に入りフォルダ』に長谷工の女性社員の一人が用を足す映像が保存されていた。しかも、データを『ごみ箱』に捨てている途中だった。当初『自分はやっていない』と否定していた所長でしたが、事件発覚から3日後、警察に自首。会社を諭旨解雇になったそうです。でも、被害者の女性社員は誰も被害届を出さなかった。女性作業員も、長谷工側から『動画は全部削除した。(事件があったことを)世の中に言わないでください』と言われたそうです」(前出・A氏)

 この事実は、現場の他の作業員にも一切知らされなかった。長谷工は”事件”を公表せず、隠蔽(いんぺい)したのだ。

 本誌が問題の元所長の名前を挙げて長谷工に質問状を送ると、広報部統括部長の丸山浩司氏から次のような回答がきた。

「工事現場の社員専用仮設トイレで、盗撮カメラが発見されたことは事実です。退職した社員がいることも間違いありません。詳細については個人のプライバシーに関することであり、回答は控えさせていただきます」

 長谷工の広報は「仮設トイレ」と言うが、このトイレは完成後マンションの入居者も使うものだ。もしカメラが発見されなければ、住民が盗撮被害にあう可能性もあった。

 弁護士の若狭勝氏は話す。

「現場の所長という管理能力のある人が盗撮行為を行っていた。これは立場を利用して盗撮をしていたとも言え、懲戒解雇に相当します。会社組織としての責任も大きい。盗撮の被害者が被害届を出すかどうかではなく、企業がしっかりと法的責任を明確化するために、彼の盗撮行為は司直の手に委ねられるべきです。それが出来ていない長谷工の危機管理能力は、相当低いと言えるでしょう」 

 被害女性は精神的ショックで体調を崩しているという。長谷工と加害者である所長の罪は、極めて重い。盗撮をしていた長谷工の所長。神奈川県内のマンションを担当する第三施工統括部にいた
盗撮事件を告発するA氏。事件を公表する気のない長谷工のやり方に、疑問を抱いていた
マンションの共用トイレ(上写真)に仕掛けられていた小型盗撮カメラ。専門店では、1万円前後で売られている

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