開業1年「ヨドバシ効果」衰えず 仙台駅東、人流増加で新規出店相次ぐ 不動産価格もアップ

家電量販大手のヨドバシホールディングス(東京)がJR仙台駅東口(仙台市宮城野区)に整備した複合商業ビル「ヨドバシ仙台第1ビル」が、2日で開業から1年を迎えた。集客力は大きく、隣のヨドバシ仙台第2ビルと合わせた来店客は、延べ1000万人を超えた。両ビルの周辺は飲食店などの出店が相次ぎ、地価も上昇し、不動産取引が活発化するなど活況を呈する。「ヨドバシ効果」は1年たっても衰えていない。(経済部・横山浩之)

両ビルの来店客は延べ1000万人超

 第1ビルは地上12階、地下1階。東北最大級のヨドバシカメラマルチメディア仙台を核テナントに、衣料品販売のユニクロやジーユー(GU)、靴販売のABCマートなどの店舗が入る。1、6階に広がる飲食店フロアには計28店が並ぶ。
「効果は抜群」

 歩行者専用デッキでつながる第2ビルには昨年8月、食品スーパー「ロピア仙台ヨドバシ店」が東北初出店した。仙台駅の東西自由通路は東口へ向かう人の流れが増加し、そのまま2棟へと吸い込まれていく。

 両ビルを管理するヨドバシ建物仙台事務所によると、今年5月の来店客は平日が1日平均1万4000~1万9000人、土日は2万5000~3万8000人。仙台駅東まちづくり協議会の松坂卓夫理事長は「1年たっても土日は開店を待つ客の行列ができる。効果は抜群だ」と歓迎する。

 携帯電話の位置情報を基にしたNTTドコモのモバイル空間統計を見ても、西口を含む仙台駅周辺の滞在人数は、開業前より増加している。日曜の午後2時台で比較すると、今年5月12日は5087人で、開業前の昨年5月28日(4434人)を14・7%上回った。

 人流の増加に伴い、駅東口には事業者の出店が相次ぐ。仙台市が昨年、宮城野区榴岡地区に出した食品衛生法の営業許可は67件で、前年の6・7倍に伸びた。うち飲食店が54件を占めた。

 宮城野通沿いの店舗は客足の増加を実感する。「洋食家OBARA おにおんとまと」のオーナー小原広子さんは「『東口まで来たので…』と言って来店するお客さんが、以前に比べて多くなった」と喜ぶ。

「ヨドバシ頼み」でない魅力づくりも

 不動産取引も活気づく。駅東口周辺の事業用不動産の取引はコロナ禍前の2019年は6件だったが、昨年は9件に増えた。不動産調査会社シーカーズプランニング(仙台市)によると、ビルのテナントの入退去が活発化した今年1~3月は、駅東口周辺で空きテナントを探す法人が多かった。

 今年1月1日時点の公示地価で、宮城県内の商業地の変動率トップ3を、駅東口周辺の3地点が独占した。1位の宮城野区榴岡4丁目(宮城野センタービル)の価格は、前年から18・8%も上昇した。

 日本不動産研究所東北支社(仙台市)の五十嵐亮治支社長代理は「ヨドバシ第1ビルを含む一帯の再開発によって、駅東口のポテンシャルが上がり、地価上昇につながった」とみる。

 活況は定着するのか。19年に発足した駅東まちづくり協は、宮城野通の歩道を活用し、キッチンカーによる飲食販売など、にぎわい創出の社会実験を続ける。昨年11月はマルシェも開催し「ヨドバシ頼み」でない魅力づくりに取り組む。

 松坂理事長は「住みたいエリアのナンバーワンを目指したい」と意気込む。

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