■「迎春」でひんしゅくをかうことがあります
例えば「迎春」「謹賀新年」「明けましておめでとうございます」の中でどれを選びますか? 形式にとらわれすぎた年賀状は味気ないものですが、なんとなくコレ……と安易にセレクトしていると、思わぬ失敗をしてしまうことがあります。最低限のマ ナーを守るために、年賀状に不可欠な賀詞についてまとめてみました。
※賀詞とは?
祝いのことば、祝詞。(本来は年賀状には限りません)
■主な賀詞の意味
「A Happy New Year」は「よいお年を」というニュアンスなので、一般的にはクリスマスカードに添えて使います。まずは、それぞれの意味を知っておきましょう。
□1文字の賀詞
・寿:めでたい
・福:幸せ
・賀:祝い
・春:新年、年の初め
・禧:よろこび
□2文字の賀詞
・賀正:正月を祝う
・賀春:新年を祝う
・頌春(しょうしゅん):新年をたたえる
・迎春:新年を迎える
・慶春:新年をよろこぶ
・寿春:新年を祝う
・初春:新しい年、年の初め
・新春:新しい年
「賀」が含まれる賀詞は相手に対してお祝いを伝える感じになり、「春」がつく賀詞は春になりましたね、という感じになります。「春」が新年をあらわすのは、昔は立春ごろに元日が巡ってきたからです。
□4文字の賀詞
・謹賀新年:謹んで新年をお祝い申し上げます
・謹賀新春:謹んで新しい年をお祝い申し上げます
・恭賀新年:うやうやしく新年をお祝い申し上げます
・恭賀新春:うやうやしく新しい年をお祝い申し上げます
・敬頌新禧(けいしょうしんき) :うやうやしく新年のよろこびをおたたえ申し上げます
□文章の賀詞
・明けましておめでとうございます
・新年おめでとうございます
・新春のお慶びを申し上げます
・謹んで初春のお慶びを申し上げます
・謹んで新春のご祝詞を申し上げます
□英語の場合
・Happy New Year : 新年おめでとう
※A Happy New Year:よいお年を(年が明ける前に使うので、年賀状では「A」をつけません)
■失敗しない賀詞の選び方
では、どれを選べばよいのでしょう? 最低限のルールがあるので、好きなものというわけにはいきません。
□相手が目上の場合
・「謹賀新年」「恭賀新年」など4文字の賀詞
・謹んで新春のご祝詞を申し上げます
・謹んで初春のお慶びを申し上げます
□相手が目下・友人の場合(目上の人に使ってはいけないもの)
・「寿」「福」など1文字の賀詞
・「賀正」「迎春」など2文字の賀詞
□相手を選ばず使える賀詞
・明けましておめでとうございます
・新年おめでとうございます
・新春のお慶びを申し上げます
・Happy New Year
・(相手が目上の場合の賀詞もOK)
相手によって賀詞を変えられない場合には、相手を選ばず使える賀詞、または相手が目上の場合の賀詞を用いると無難です。
■なぜ1文字、2文字を目上の人に使ってはいけないの?
もともと、賀詞の基本は「謹賀新年」「恭賀新年」「敬頌新禧」などの4文字からなるもので、「謹(謹んで。相手を尊ぶ)」「恭(うやうやしく。礼儀正しく 丁寧)」「敬(尊んで礼をつくす)」「頌(ほめたたえる)」といった相手の方への敬意と丁寧な気持ちを表す語が入ることで、礼儀にかなった挨拶の敬語とな ります。
ところが、漢字1文字の「寿」「福」「賀」などは「おめでたいことです」といっているにすぎませんし、漢字2文字でも「賀正 (正月を祝います)」「迎春(新年を迎えました)」「新春(新しい年です)」といっているだけで、相手に対する敬意や丁寧さに欠けてしまいます。だから、 漢字1文字や2文字のものは目上の方には使わないほうがよいとされているわけです。
ちなみに「元旦」とは1月1日の朝のこと。「平成○年1月1日 元旦」は重複表現なので間違いです。
※参考文献:『明鏡国語辞典』『問題な日本語』(ともに、北原保雄編/大修館書店)
■賀詞を重複させてはいけません
よくありがちなのが、「迎春」「謹賀新年」などの短い賀詞と「明けましておめでとうございます」などの文章の賀詞を重複して使ってしまうこと。賀詞を使ったら、添え書き(「今年もよろしく」などの文)には賀詞を書かないように注意しましょう。
■「新年明けましておめでとうございます」は間違い?
間違いではありませんが、「間違いだ」と思っている人が多いのでご注意ください。よく「新年」と「明けましておめでとうございます」が重複しているから間違いだと言われていますが、『問題な日本語』(北原保雄編/大修館書店)の中で正しいという見解を見つけました。
しかし、一般的に“「新年明けましておめでとうございます」は間違いです”という見解が浸透しているので、「明けましておめでとうございます」「新年おめでとうございます」を用いたほうが無難でしょう。