宮城県名取市内陸部の熊野那智神社が2019年5月、20年ぶりに神事「お浜降り」を執り行う。神社の由来にちなみ、沿岸部の閖上地区へみこしを運行する行事で、東日本大震災後に現地再建が進む閖上地区の「まちびらき」に合わせる。震災後に修復された「懸仏(かけぼとけ)」の収蔵庫建設費と共に、インターネットのクラウドファンディング(CF)で経費を募る。
神社創建は719年。この3年前に閖上地区の漁師が海底からご神体を引き上げると、夜ごと内陸部の高舘山の方角が光を放つようになり、山上に祭ったことが起源とされる。お浜降りはご神体の里帰りのような神事だが、地域住民の高齢化などで1998年以降、行われていない。
今回は創建1300年の節目で、復興達成宣言に向けた来年5月26日のまちびらき当日に実施。高舘山を早朝に出発し、市中心部の増田地区を経て閖上地区に向かう。
以前は高舘地区の住民がみこしを担いでいたが、今回は復興を果たした市内の団結力を示すため各地区が協力する。みこしの修復費などで約300万円かかるとみられる。
神社は併せて、国や宮城県の重要文化財に指定される懸仏155点の収蔵庫建設費も工面したい考え。仏の姿を表した金属板で神社の物置に掛けてあったが、震災の揺れで落下し、東北歴史博物館(多賀城市)などで修復された。耐火性のある収蔵庫を造って戻そうと計画するが、最大で6000万円が必要だという。
井上幸太郎宮司は「お浜降りや懸仏は、地域にどれだけの歴史があるか知ってもらういいきっかけになる。協力をお願いしたい」と呼び掛ける。
申し込みはCFサイト「レディーフォー」へ。目標は150万円で、神事開催費や収蔵庫建設費の一部に充てる。来年3月4日午後11時まで受け付ける。