5月16日、「嵐」の松本潤さんが所属事務所からの独立を発表しました。 新年度がスタートする流れで、松本さん以外にもいろいろな人が所属事務所を離れました。 【写真】地上波で見ないのに「年収2億円」のお笑いコンビはこちら 一部挙げるだけでも、氷川きよしさん、西島秀俊さん、中村昌也さん、関口メンディーさん、キンタロー。さん、みなみかわさんら人気者の名前が並びます。 以前は事務所退所となると「え、何かあったの?」という空気がつきまとっていたものですが、今は退所のニュースがあってもサラッと報じられるだけ。それくらい辞める人が増え、辞めることも普通の世の中になりました。 もちろん、辞める理由は人それぞれ。それが大正解なのですが、その根底に流れているのが“芸能人のカタチの変化”だと痛感します。 10年ほど前までの芸能人の定義。それは“テレビに出ている人”でした。 ここにももちろん例外はありますが、大ざっぱに言うとそれが一般人と芸能人を分けるラインでもありました。 となると、芸能人になるためには普通の世界からは離れた“テレビ島”に行かないといけない。その島に行くためには芸能事務所という特別な“渡し舟”に乗るしかない。いつの世にも芸能界にあこがれを持つ人は当然いますから、渡し舟稼業をしている芸能事務所には乗船希望者が集まりました。
■今は“渡し舟”に乗らなくても行ける ただ、今はテレビに出ていなくても芸能人的なことがいくらでもできる時代になりました。YouTubeもあるし、SNSも発達しているし、あらゆる配信ツールもある。スマートフォン一台あれば、何でもできる世の中になりました。 そうなると、これまでのシステムは当然変わります。渡し舟に乗らなくても行ける“YouTube山”の頂を目指す。配信で固定ファンをつかむ“ライバー平原”で自分がやりたいパフォーマンスをする。新たなカタチがどんどん生まれています。 システムが変わって、芸能人のカタチが変わる中で、いろいろな選択肢が生まれた。これが根底の水脈にあることは間違いありません。 そして、日々取材をする中で、芸能人の心境に変化が訪れていることも痛感しました。 先月、関口メンディーさんもが退所会見を開きました。 「世界のエンターテインメントの中で活躍できる人間になりたい」という退所理由も口にされていましたが、事務所に対しては「出来の悪い僕にもチャンスをくださり、一から育ててくださった皆さんには感謝しかありません」と思いを吐露していました。 取材してみても、会見で出たメンディーさん、そして『GENERATIONS』のメンバーの言葉にウソはない。もし本当に何かトラブルやもめ事があっての退所ならば、メンバー全員がそろって、会見というガチンコの場に出ることはあり得ない。あそこで語られた言葉が正味の話だと聞きます。
■あえて恵まれた環境を出る ならば、余計になぜ辞めなければならなかったのか。何も不満はないが辞める。パッと聞くと「?」という思いにもなります。ただ、いろいろな方に話を聞いていくと「そういう世界があるんだな」という理解を得ることにもなりました。 3月末でコンビ「尼神インター」を解散し、所属していた吉本興業を出た誠子さんに拙連載でお話をうかがった際にも同じようなことをおっしゃっていました。 「吉本興業に何の不満もありません。むしろ、高校を出てからずっとお世話になってきて感謝しかない。これからも、ピンになって吉本でやっていくのが正解なのかもしれませんけど、あえて恵まれたこれまでの環境を出る。そこで自分に何ができるのか。それをやってみたくなったんです」 キンタロー。さんが松竹芸能を退所する際にも取材を重ねましたが、30歳という遅いデビューだったキンタロー。さんを1年ほどで人気者にしてくれた。ご本人には事務所に対して感謝しかない。二人のお子さんと一緒にいる時間を大切にしたい思いと、自分自身で何ができるのか。それをいま一度ゼロから試してみたいという思いを聞きました。
■「常識」は時代によって変わる 不満があるから事務所を出る。大きなトラブルがあったからケンカ別れ的に出る。退所にはそういうきな臭いイメージが以前はつきまといましたが、今は「不満はないけど出る」。これが主流になっていると感じます。 “ここ”しかなければ何も思わないが、今は“あっち”があるから思いが募る。守られた、慣れ親しんだ環境ではなく、等身大の自分で勝負をしてみたい。そのリスクももちろん把握しているが、それ以上に「どうなるのか」を経験してみたい。それをしなかったら、将来の自分が後悔するのでは。そんな風を強く感じます。 常識は時代によって変わります。10年後、何が常識になっているのか。それは現時点では分かりません。ただ、今が大きな過渡期になっていることだけは間違いありません。