関西で「コインロッカー」値上げの訳 「手ぶら観光」推進、「荷物難民」対策も

街中で大きなスーツケースを引いて歩く外国人観光客らが増える関西で、駅にあるコインロッカーの利用料金の値上げが相次いでいる。背景にはコインロッカーの不足の問題がある。一方、「手ぶら観光」を推進しようと、関西国際空港とホテル間をつなぐ荷物の即日配送サービスも増えており、かばんの預け場所がなかなか見つからない「荷物難民」への対策も進んでいる。(山本考志)

【表でみる】関西鉄道各社のコインロッカー値上げ事例

 ■阪急梅田駅では400円

 訪日外国人客(インバウンド)の増加が著しい大阪を中心にロッカー料金の値上げが続き、京都や奈良などへと広がっている。

 近畿日本鉄道の各駅では3月以降、大阪府内や奈良、京都両県の主要駅を中心に約40駅で100円値上げし、400~800円にした。

 京阪電鉄でも昨年10月~今年3月に全駅で一部のサイズを除いて100円アップし、料金の幅は400~千円になった。

JR西日本では2月に大阪駅と京都駅で小型の料金を100円値上げし、400円に。阪神電鉄と阪急電鉄の大阪梅田駅でも6月、7月にそれぞれ小型を100円値上げし、400円にした。

 一般的に、料金の値上げは需要を抑制することにつながるが、強気の姿勢のようだ。大阪府によると、府内を訪れたインバウンドは平成25年の263万人から昨年は1141万人(速報値)と約4倍に増加し、コインロッカーの需要は底堅い。

 鉄道各社は、値上げをして得た収益を設備投資に振り向け、ロッカーの増設に大型化、電子マネー対応機種への更新などを急ぐ考えだ。

 ■「荷物難民」解消へ手ぶら推奨

 空港や観光地でスーツケースの預け先が見つからない「荷物難民」。宿泊先などへの持ち運びは避けられず、通勤時間帯などの混雑時に重なればトラブルにもなりかねない。そうした問題を解消し、手ぶら観光を可能にするサービスも始まった。

南海電鉄のグループ会社「サザントランスポートサービス」は昨年12月から、南海・関西空港駅の改札口近くに、荷物の即日配送を受け付ける「n・e・s・t関西空港店」を運営している。現在は同店の窓口と大阪・京都両市内のホテル間での相互の即日配送が可能で、利用料金は税込み1800~2500円。

 同店は国土交通省・観光庁が手ぶら観光を支援する民間事業者への補助事業でサービス拠点の認定を受けた。政府は今年の補助事業の応募締め切りを10月末から12月20日まで延長して推進を図る。

 ホテル間での荷物の即日配送を手掛ける「ギガラビット」(大阪市)では、即日配送が大阪市内約500件、京都市内約350件のホテル間で可能。フロントで午前11時までに荷物を預ければ、遅くとも当日午後8時までに次の宿泊先で荷物を受け取ることができる。料金はスーツケース1個で税別2千円。

 手続きはホテルを介さず、同社のホームページ上で前日までに予約すれば利用でき、ホテルから関西国際空港までの配送も可能。荷物の現在地は衛星利用測位システム(GPS)で確認できるため、安心して観光を楽しむことができる。

 今月中には南海難波駅近くの窓口に荷物を預ければ、大阪市内のホテルに即日配送するサービスなども始める予定で、同社の金田仁二郎社長は「即日配送は子連れの家族らに喜ばれ、リピーターも多い。サービスを拡充し、日本での旅行をより快適にしていきたい」と意気込む。

 スマートフォンからの予約で飲食店などに荷物を預けられるサービス「ecbo cloak(エクボ・クローク)」も普及。スマホアプリ運営の「ecbo」(東京)が平成29年1月に始めたサービスで、関西でも預かり先の施設が急増しており、同社の広報担当者は「大阪を中心とした荷物預け先の需要はまだまだ伸びる余地がある」とみている。

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