防災集団移転事業が実施されている宮城県内の東日本大震災被災地で、移転跡地の半数以上の利用方針が既に決定し、事業に着手したか計画を策定中であることが9日、分かった。跡地の利用方針については、工場や商業施設の集積を目指す産業用地が4割を占めた。
津波被害を受けた沿岸12市町の8月時点の状況を県がまとめた。それによると、自治体が既に取得済みか今後取得予定の移転跡地は1142ヘクタールとなっている。
このうち国の復興交付金を受けたり、造成が始まったりした「事業着手済み」は28%。「計画策定中」の25%と合わせて53%に達し、見通しが立たない「現状維持」の47%を上回った。
跡地を被災前の集落タイプでみると、住宅地など「都市」や「農業」では現状維持が30%台なのに対し、「漁業」は75%と高かった。漁港後背地が多く、用途が限定されているためとみられる。
事業着手済みと計画策定中の跡地の具体的な利用方針は「産業用地」が43%でトップ。「公園・緑地」19%、「道路・防潮堤など」11%と続いた。
今後の利用方針が定まっていない現状維持の移転跡地では、除草など維持管理上の課題も浮上している。県は今後、各自治体と管理費用をどう抑制するかなどについて協議を進めるほか、地域住民の主導による利用策も検討する。
県復興まちづくり推進室は「住民が集団移転せざるを得ないほどの被害があった土地で、半数以上が今後の利用に向けて具体的な動きが出ているのは喜ばしいこと」と分析する。