東日本大震災の被災者が住む宮城県内の仮設住宅で、警察署から「地域防犯サポーター」に委嘱された住民ボランティアが奮闘している。仮設住宅の見回り活動を中心に高齢者宅も訪れ、日常の困り事を聞いたり、防犯情報を住民に伝えたりしている。署や自治体と連携しながら解決策を講じ、仮設住宅の治安の維持に一役買っている。
防犯サポーター制度は2011年6月に始まった。各仮設住宅の自治会長らが選ばれ、住民の安全安心に関する要望や意見を取りまとめ、防犯情報を発信する。
2月末現在、仮設住宅がある県内12署の管内で321人が活動。このうち、石巻市北上地区の防犯サポーターから昨年春、河北署に「海岸に野良猫がたくさんいる」との情報が寄せられた。
近くの仮設住宅では野良猫に部屋の中を荒らされたり、干物を食べられたりするトラブルが起きていた。河北署は石巻市と連携し、餌付けをしないで戸締まりをしっかりするよう住民への広報を強化した。
防犯サポーターからの情報がきっかけで、仮設住宅出入り口の県道に横断歩道を整備したこともある。同署の担当者は「仮設住宅と警察との懸け橋になってもらっている」と感謝する。
石巻市小船越の仮設住宅で防犯サポーターを務める電気工事業高橋照雄さん(64)は「大半が顔見知りなので、会えば声を掛け、防犯ポスターは目立つ場所に貼るよう工夫している。高齢者が多いので、仮設住宅での生活が終わるまで面倒を見たい」と意欲を語る。
県警生活安全企画課は「警察では分からない情報も防犯サポーターから寄せられる。今後も住民代表として協力をお願いしたい」としている。
◎仮設での犯罪件数204件/器物損壊半数超す/2月末現在
県内の仮設住宅で2011年5月以降、車のタイヤに穴を開けるなどの刑法犯認知件数が2月末現在で204件に上ることが28日、県警のまとめで分かった。
県警によると、内訳は器物損壊が120件(58.8%)で最多。盗みが55件(27.0%)、暴行・傷害が14件(6.9%)、性犯罪などその他が15件(7.4%)だった。
器物損壊事件はタイヤに穴を開けたり、車体に傷を付けたりするケースが大半。同じ集落の出身者が住む仮設住宅より、別々の地域から集まってきた仮設住宅の方が発生件数は多いという。
県警生活安全企画課は「事件の背景には仮設暮らしのストレスもあるとみられる。住民同士の仲間意識が高いほど、犯罪抑止につながる傾向がある」と分析している。
2013年03月29日金曜日