周りに比べ、自分は仕事の効率が悪いようだ。一緒に飲んだ翌日、自分は遅刻したのに、同僚は朝早くから仕事をしていた――。日々の何気ない習慣を改めるだけで、そんな悩みも解消するかもしれない。
■午前7時の習慣 「朝食は何を食べるべきか」
▼食べるならどっち?
[A]塩むすび
[B]タマゴハムサンド
● 石川先生の場合
実行するか否かで1日のパフォーマンスががらりと変わる習慣として、予防医学研究者 医学博士の石川善樹氏が重視するのは、「起床1時間以内に朝日を浴び、朝食を摂ること」だ。「人の体は体調のベースともなる“体内時計”が正常に作動する ことが重要です。体内時計が乱れていると、目覚めが悪く、やる気も起きづらいのです」。
では、どうすれば体内時計は正しく動くのか。
その解が「朝日を浴びると同時に朝食を摂ること」なのだ。朝日を浴びることは「カーテンを開ける」で完了だが、案外やっかいなのは朝食だ。「基本は ご飯と納豆、みそ汁。もしくはパンとベーコンエッグ。いずれも炭水化物とタンパク質のコンビです」。具なしおにぎりなら、サンドイッチを選ぼう。
炭水化物(糖質)は、脳の唯一のエネルギー源だが、炭水化物だけ(例:トーストのみ)だと、血糖値を急激に上げる。一時的に脳は活性化するが、その 後、インスリンの働きで急降下し、イライラしたり集中力が欠如したり、疲れやすくもなる。「タンパク質は血や筋肉の原料であるとともに、血糖値の上昇を抑 える効果もあります。腹持ちもよく空腹感も防げます」。
朝食は摂らないほうが体調がいいという人もいるが、飢餓状態で昼食を摂ると一気に血糖値がアップするので、仕事に悪影響が出る。
さらに石川氏がいかがなものかと言うのは、朝食代わりの、市販の野菜ジュースだ。「野菜ジュースの多くには、糖分がかなり含まれていて、血糖値急上 昇の要因に。栄養ゼリー商品も同じです。運動時はいいのですが、仕事前に飲んで一気に血糖値が上がり、仕事を始めた頃に一気に下がる。そのアップダウンは 脳と体に大きな負担を強います」
●新見先生の場合
朝の習慣で大事なのは、決まった時間に起きて朝日を浴びること、と言うのは帝京大学医学部 外科准教授の新見正則氏も同意見だ。
「前日の寝る時間はバラバラかもしれませんが、基本的に起床時間の誤差は1時間まで。体内時計のリセットになるので、起きたら朝日を浴びてください。曇りの日も同様です」
休日も起床時間の誤差は1時間以内だが、どうしても耐えられなかった場合、決まった時間に一旦起きて朝日を浴びれば、また寝てもいいという。「眠りのリズムを作って、崩さなければいいのです」。
朝食については、新見氏は「摂っても、摂らなくてもOK」派だ。ただし、それは時間がないなら摂らなくてもいい、ということではない。
「体内の脂肪をうまく燃やせる人は、食べなくても脂肪からブドウ糖を作れる機能が体に備わっているので、朝食を摂らなくても問題ありません。一方で、食べないと頭が回らない人、食べないと寒いと感じる人は、朝食を摂らなければなりません」
朝食を食べる際の内容だが、「主食、甘い物、果物といった炭水化物を摂らないこと」だという。
「現代の食事は炭水化物が多すぎ、糖尿病患者が増えています。例えば、納豆でも炭水化物は摂れますから、わざわざ主食や甘い物で摂りすぎないこと。食べたい人は、お酒と同じように、摂取しすぎると体に害だと知って食べましょう」
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1981年生まれ。東京大学医学部を経て、ハーバード大学大学院修了。企業・組織の健 康づくり調査・研究などを行うCampus for Hおよび、がん検診の受診率をあげる、キャンサースキャンの共同創業者。近著に『疲れない脳をつくる生活習慣―働く人のためのマインドフルネス講座。
1959年生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、オックスフォード大学大学院に留学、 98年博士課程修了。2002年より現職。医学博士。漢方も使える臨床医、移植免疫の研究者でもあり、13年イグ ノーベル賞受賞。著書に『3秒でわかる漢方ルール』『長生きしたけりゃデブがいい』ほか多数。
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(大塚常好=文 大森大祐=撮影)