雇用や需要創出で2011年度までにデフレ解消=新成長戦略

 [東京 18日 ロイター] 政府は18日、2020年度までの平均で名目3%・実質2%を上回る経済成長を実現する道筋を示した新成長戦略を閣議決定した。昨年末に公表した基本方針をベースに行程表など具体策を盛り込んだ。
 需要と雇用の創出効果の高い事業を強化するとともに、日銀に金融政策面で協力を仰ぎ、11年度までに需給ギャップを解消し、デフレを克服する。
 新成長戦略は環境・エネルギーや医療・介護、金融など7つの戦略分野を対象として、優先的に取り組む21の国家戦略プロジェクトを柱に330項目からなる。
 昨年末に公表した基本方針では盛り込んでいなかった「金融」を新たに戦略分野に加えたほか、日本企業の競争力強化や外資誘致のため、法人税の段階的な引き下げを掲げた。20年度までに名目3%、実質2%の経済成長を達成するため、各戦略による経済成長引き上げの寄与度などを試算。自公政権の成長戦略が主に産業など供給サイドを主軸としていたのに対して、供給戦略と併せて雇用や医療・介護の充実で需要の拡充を明記しているのが特徴。これら社会保障の充実のためには、必要な税や保険料の負担を国民に求めることも示している。
 ただ、11年度以降の予算を拘束する力はなく、あくまで予算配分を規定するために参照する戦略という位置づけ。法人税の引き下げや、社会保障充実のための増税に言及しているのも政府の成長戦略としては異例だ。今回の戦略では、法人税の引き下げ幅や時期を明記できず、現在40%程度の実効税率を「主要国並み(約25%)に引き下げる」ことを「緊急の課題」とするにとどめるなど、今後の関係省庁間の調整など課題も残った。 
 成長戦略では、実行期間を2011年度までの「フェーズ1」と12年度以降20年度までの「フェーズ2」に区分。11年度までのフェーズ1は、現在5%程度の需給ギャップを解消する「デフレ清算期間」と位置づけ、デフレ終結をマクロ経済政策運営上の最重要課題とする。財政面では、「中期財政フレーム」のもと、事業仕分けなどを通じ、歳出の無駄を削減すると同時に、需要・雇用の創出効果の高い政策や事業を重視する。日銀には「デフレの終結に向けた最大限の努力を期待する」と明記し、財政・金融政策の取り組みを通じて、過度の円高を回避し、内需と外需をともに下支えする経済成長を実現する。
 11年度以降20年度までのフェーズ2では、需要面で、政策を実行しない場合に今後の経済成長率が過去10年間並に1%程度にとどまると試算し、成長戦略で1%以上の引き上げを目指す。供給面でも、需給ギャップ解消による遊休能力の活用で0.5%経済成長を引き上げ、政策効果などと合わせて2%以上の成長を狙う。
 7つの戦略分野のうち、医療・介護で50兆円の需要創造と284万人の雇用を創造。環境分野でも50兆円・140万人、観光で11兆円・56万人、アジア関連で12兆円・19万人とそれぞれ需要を雇用を生み出し、現在5%の失業率を早期に3%にする。
 戦略分野はいずれも、複数の省庁の連携が必要な業際的な項目が多い。総合取引所は、安倍政権でも提案されたが、証券取引所と商品関連取引所の所轄官庁である金融庁と経済産業省、農林水産省の調整が難航し棚上げとなった経緯がある。「所轄官庁ありきでなく、利用者の利便性ありきで検討する」(近藤洋介・経産大臣政務官)としているが、他の政策についても関係省庁や業界との連携をどれだけ実現できるかなどが成否を握る可能性がありそうだ。

タイトルとURLをコピーしました