雑誌付録戦争が再燃?! 紙ならではのお得感・ユニーク・高品質

大きなリュックにブランド化粧品、果てはミニお掃除ロボまで。

ユニークで高品質な付録を付けた雑誌が話題を呼んでいる。電子版の定額読み放題サービスが浸透する中、紙の雑誌ならではのお得感を与えられる切り札として、出版各社がしのぎを削っている。

「史上初の家電付録」と話題になったのは、少女漫画誌「ちゃお」(小学館)4月号の付録「プリちぃおそうじロボ」。人気漫画の主人公をあしらった手のひらサイズのロボット掃除機で、モーターで走行し障害物にぶつかると方向転換する。大ヒット家電「ルンバ」を想起させる性能と愛らしさが受け、53万部がわずか2週間で完売した。

「子供は大人のマネをするのが好きなので、消しゴムのカスを掃除できるような小さな『ルンバ』ができたら面白いと思った。反響は今までで一番」と「ちゃお」編集部の植田優生紀さん。海外で安価に生産することで、雑誌の価格も580円に抑えた。植田さんは「付録にひかれて雑誌を買った子が、漫画好きになってくれたら」と期待する。

付録競争が激化したのは重さやサイズなどの規制が緩和された平成13年以降。ブランドと提携したバッグなどを挟んだ女性誌が書店をにぎわした。読者の慣れもありブームは22年ごろに一服したが、ここ1、2年で再燃。「目が肥えた読者を満足させるため、高品質化が進み、複数付ける例も出てきた」(出版科学研究所)という。 女性誌ではケース入りの有名ブランド化粧品セットのように、使い捨てではなく長く使える品も多い。昨年から毎号付録を付ける美容誌「美人百花」(角川春樹事務所)は高級感のあるレザー調の財布を付けた同年12月号が完売。付録の効果もあり部数を伸ばしている。

宝島社は昨年、マーケティング担当者を交えた付録開発会議を設置し品質の向上を図る。男性ファッション誌「smart」昨年9月号の付録は人気ブランドと提携した生地に厚みのある本格的なリュック。この号は通常700~800円台の価格を980円に上げたが完売した。広報担当者は「読者は雑誌と付録をセットでお金を払う。縫製など細部の完成度を高め期待以上の物を提供したい」と話す。

背景には深刻な雑誌離れがある。出版科学研究所によると、昨年の紙の雑誌の推定販売金額は19年連続前年割れの7339億円。ピークだった平成9年の5割弱にまで減り41年ぶりに書籍の販売額を下回った。スマートフォンの普及などに押された格好だが、付録付き雑誌は好調という。出版科学研究所の柴田恭平研究員は「目をひく付録は、インスタグラムなどのSNSで魅力が拡散しやすい。電子雑誌では手にできない強みとしてまだ注目されそうだ」と話している。(海老沢類)

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