離島の漁業史研究拠点に 気仙沼大島に図書館

宮城県気仙沼市の離島・大島に残る貴重な漁業資料を収蔵するミニ図書館が、神奈川大(横浜市)などの協力で島内に建設され ている。資料は宮城県漁協気仙沼支所大島出張所(旧大島漁協)に保管されていたが、東日本大震災の津波で浸水する被害があり、同大などが保全活動に取り組 んできた。9月完成予定で関係者は「全国の漁業史研究の拠点として生かしたい」と話している。

建物は木造平屋約50平方メートルで、6 月に着工。神奈川大日本常民文化研究所(常民研)に所属する同大工学部の重村力教授(建築デザイン)が、ミニ図書館を建てて「大島漁協文庫」として資料を 収蔵することを提案。重村教授と同大の三笠友洋助教の設計で、デザインはこの地域の板倉の外観を現代化し、船のイメージを加えた。
旧大島漁協は1903年設立。明治以来の文書を系統的に整理収蔵してきた。当時の漁村社会の漁法や漁業権、漁場などの発達経緯が分かる資料として全国の研究者に注目されている。被災した資料は常民研が同大学院歴史民俗研究科とともに再生し整理している。
7月17~21日には、重村教授らと研究室の大学院生6人が島を訪れ、ワークショップを開催。地元の大工らと一緒に柱を立てたり床板を張るなどの作業に汗を流した。
同大大学院博士課程前期2年中野由美子さん(23)は「大工さんと実際に体を動かして作業をするのは初めて。とても参考になった」と話す。
今後、歴史民俗を研究する大学院生も文書資料整理のワークショップを開催。9月には文庫の未来に向けたシンポジウムを開く予定だ。
漁協関係者や同大研究者らで組織し、建設主体となる大島漁協文庫の会の水上忠夫会長は「多くの方のご支援で文庫の建設が進んでいることを感謝したい」と語 る。重村教授は「大島の文化に対する誇りを地元の人たちが確かなものにし、復興やまちづくりに役立ててほしい」と話している。

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