原発停止による電力不足の長期化や電気料金値上げが懸念される中、政府は、電力会社や発電事業者が電力を売買する「日本卸電力取引所(JEPX)」の活性化策の検討に入った。新規参入を促進し、供給力の拡大や競争による料金値下げにつなげるのが狙い。現在は大半が電力会社との相対で売買され、取引所が機能していない。このため、電力会社に対し、発電量の一定割合を取引所に卸売りすることを義務づける案を軸に検討する。
取引所活性化は、政府の「エネルギー・環境会議」が7月下旬に打ち出した需給安定策の柱の一つ。今秋から経済産業省の専門家らによる審議会などで議論する。
具体的には、電力会社が発電量の一定割合を取引所に卸売りすることで、取引量を確保。電力会社は不足分を取引所経由で購入する。割合は「1、2割」が想定されている。
取引所が活性化されると、市場価格の目安ができ、発電事業者は採算などを勘案して参入しやすくなる。需給が逼迫(ひっぱく)すれば、価格は上昇するため、余剰電力を持つ企業などが積極的に売りに出し、電力不足の解消にもつながる。
JEPXは電力自由化の一環として、平成15年に設立された。発電事業者や自家発電を持つ企業、余剰電力のある電力会社が取引所に卸売りし、電力が足りない電力会社が購入する仕組みだ。
ただ、電力会社は「必要なときに必要な量を調達できるか不安がある」とし、発電事業者などと相対契約を結び、直接購入するケースが大半を占めている。この結果、年間の電力取引量全体のうち取引所を経由した売買はわずか1%未満にとどまっている。
相対取引は「競争激化や値下げ合戦を嫌う電力会社の意向」(新規事業者)が強く反映され、新規参入の障害になっていると指摘されてきた。
また電力需給が逼迫した場合でも、取引所を積極的には活用せず、高コストでも火力発電の稼働を増やすなどで対応。結果として、電気料金が割高になるという弊害もある。
経産省ではこうした反省も踏まえ、取引所を活性化し、競争原理を導入することが不可欠と判断した。