電動アシスト自転車の販売が好調だ。環境意識の高まりや健康志向に加え、東日本大震災後は、ガソリンが不要な移動手段としても見直された。すでに国内出荷台数ではバイクを上回り、二輪車市場の“主役”を奪う勢いをみせている。さらなる市場の拡大に向け、中高生ら若い世代の需要を取り込もうとする動きも出てきた。
ヤマハ発動機は、先月末に幼児2人乗り対応モデル「パス キッス ミニ」(希望小売価格13万7000円)を発売。最近では育児に積極的にかかわる「イクメン」の利用も増えていることから、男性でも抵抗のない外観デザインや色を採用した。
パナソニックサイクルテックは先月、電動アシスト自転車の弱点である重さを改善した「ビビ・ライト・U」(10万5000円)を投入した。重量を従来モデル比約17%減の21.5キロに抑え、女性や高齢者でも手軽に扱えるようにした。ブリヂストンサイクルは女性誌とコラボしたモデルを展開。昨年6月の発売後、年間販売目標の3000台を2カ月で達成し、現在も計画を上回る販売台数で推移しているという。
市場拡大に伴い、ニーズも多様化してきた。ヤマハ発は9万円を切るエントリーモデルや8段変速ギアを搭載したスポーツ仕様などラインアップを充実させる。同社の森本実SPV事業部長は「ドライブユニット(駆動装置)の制御技術で他社との差別化を図り、業界全体の成長率を上回る販売拡大を続けたい」と意気込む。
電動アシスト自転車は1994年、ヤマハ発が世界で初めて発売。当初は高齢者の利用を想定していたが、次第にメーンターゲットは子育てをする母親世代に移ってきた。2011年の市場は94年の約12倍に拡大している。
今後も右肩上がりの成長が続くかは、比較的“手つかず”だった中高生への訴求がカギとなりそうだ。森本部長は「まだ『電動アシスト自転車に乗るのが恥ずかしい』という若者もいる。若い世代に受けるデザインを追求するなどして、10~20代へも訴求していきたい」と話している。