16歳以上なら免許不要で、ヘルメット着用は努力義務。そんな「特定原付」にいま、世の中の注目が集まっている。その多くが、電動キックボードに対することだが、ここへきて「電動サイクル」が登場した。いったい、どんな乗り物なのか? [写真で見る] 前後のディスクブレーキが頼もしい!「電動サイクル」のプロトタイプ 新しい乗り物である、「電動サイクル」のシェアリングサービスが2024年1月から始まる。 次世代モビリティを製造販売するglafitと自転車シェアリング等で国内最大シェアを誇るOpenStreetが明らかにした。 両社は2023年6月26日、都内で報道陣向けの勉強会と新商品発表会を行い、法規、製品、そしてサービス事業について詳しく説明した。あわせて、新商品のプロトタイプの試乗会を実施した。 今回の会見を開くきっかけとなったのは、2023年7月1日に施行される改正道路交通法(令和4年法律第32号)だ。 これにより、新たに特定小型原動機付自転車という車両区分が生まれた。警察庁では略称を「特定原付」と定めた。 この「特定原付」に対してはすでに、各種報道やSNSで多様な情報が流れているが、その中には特定原付に関する誤解や勘違いなどが見受けられる。 そこで、glafitとOpen Streetは「特定原付」に関連した事業を本格的に始める前段階で、報道陣向けや一般ユーザー向けの勉強会や試乗講習会を行うことになったという。 まず、glafitが強調したのは、「特定原付=電動キックボード、ではない」こと、また「今回の改正道路交通法で、電動キックボードの規制緩和をしたのではない」という点だ。 特定原付はけっして、電動キックボードのためだけに新設された車両区分ではなく、glafitが開発した自転車のような形状をした「電動サイクル」も特定原付である。 また、原動機付自転車(原付)は、7月1日の改正道路交通法の施行後にも、それまで通りのルールで運用される。つまり、第一種原付と第二種原付は存続する。これらを警察庁では新たに「一般原付」と呼ぶ。 その上で、新たに「特定原付」が誕生するのだ。 「特定原付」は、長さ190cm×幅60cmで高さの制限なし。最高速度は20km/h。16歳以上ならば運転免許は不要。ヘルメット着用は努力義務。走行できる場所は、車道、自転車専用道、自転車専用通行帯となる。
「電動サイクル」とはどんな乗り物なのか?
glafitといえば、電動バイクと自転車を切り替えられる「GFR-02」が人気だ。 今回初公開された「電動サイクル」のプロトタイプは、「GFR-02」に近い形状をしているが、ペダル操作はない。 glafitによれば、バッテリーは車体内部に配置し、充電容量についてはバッテリーメーカーと協議中で、航続距離については確定していない。 充電方式は車体前部を使った非接触充電の採用を検討している。 また、一部の歩道で走行が可能な保安基準部品として、ウインカーと兼用するフラッシングライトを持つ。これが点滅中は最高速度が6km/hに制御される。こうした対応を、特例特定原付と呼ぶ。 実際に「電動サイクル」プロトタイプを「GFR-02」と乗り比べてみた。 最高速度を20km/hにしたモードでの加速は、「GFR-02」とほぼ同等か、少し出足が良いといった印象だ。加減速は右手グリップの操作で行い、両手でブレーキ機構を操作する。 また、特例特定原付としての6km/hでは、正直なところかなり遅く感じて、走行姿勢を保持するのがやっとだった。 一部の歩道で使用するのは、あくまでもオプションといった感覚をユーザーは持つことが必要だと実感した。
24年に1,000台、25年には3,000台レベルで導入
こうした「電動サイクル」を使うシェアリングサービスを行うのが、ソフトバンクなどが出資するOpen Streetだ。 2016年から、自転車シェアリングサービスの「HELLO CYCLING」を展開しており、2023年5月時点でステーション数が6,600ヵ所で会員数が230万人で、業界でのシェアNo1となっている。 「電動サイクル」についても、基本的に「HELLO CYCLING」で使う、スマートフォンのアプリで予約やスマートロックを解除して使用するシステムを導入する。 サービスは24年1月から都内などで始め、初年度で1,000台、2年目には3,000台規模の導入を目指す。 glafitとOpen Streetは、「電動サイクルは、多くの人が慣れている自転車に近い操作によって操縦安定性を確保でき、また大径タイヤによって段差の超えで姿勢を崩すことも少ない」とし、「電動キックボード」に対する「電動サイクル」の優位性を強調した。 果たして、「電動キックボード」と「電動サイクル」のどちらが「特定原付」の主流になるのか? 今後の動向をウォッチしていきたい。